二人目登場

 レヴはしぶしぶ似たようなものを持ってくる。俺はすぐさまアイテムボックスにそれを仕舞い、アイテム情報を見て、レヴは風呂に入り直し、質問を続けた。


(『従者の強制』か。……ふーん、なるほどな。確かに似たものだ。ならこいつを使ってみようか)


「で? マスターの力ってなんなの? どんな能力なの? 具体的な能力名は? ……ん? ねぇ、聞いてる?」


 俺はあるにさっきのアイテムを装備してそれ以外の装備は外した状態で浴槽に取り出した。


「ね、ぇ……」


「あれ? 私は……!! みんなは! ここは! 戦況は!」


「俺の能力はアイテムボックスだ。生物として認識していなければ収納できる。基準は心臓が動いているか、いないか、だ。」


 戸惑う二人を俺は無視して説明を続ける。取り出した方のは勢いよく立ち上がり、周囲を素早く見渡しレヴを見てそして俺を見た。


「そして、収納できない物は弾かれる。そんな能力だ。それ以外の力は俺には無い」


「……ん? だ、誰よ、この女!」


「敵!? 私は捕まったのか……いや、どうやらそうではないようだが」


「ルアティ・アーヴァルズ。アーヴァルズ王国の姫さんだ。レヴ達の魔王軍が攻めていた国の姫。とでも言えば分かりやすいか」


 『ルアティ・アーヴァルズ』という単語に二人は反応した。ルアティはレヴの方に振り向き、右手を左の腰に添える。その姿はまるで剣が腰にあるかの様にルアティは構え、レヴに敵意を向けた。

 レヴはルアティに顔を向けただけで特に身構えたりはしない。ただし、湯に溶け込んでいる血を操り、すぐさま攻撃出来るようにしていた。


「二人とも全裸で何やってんだ。『互いに敵対行動をやめて大人しく風呂に入れ。これに従え』」


「……はぁ、わかったわよ」

「……ハッ! あるじに従います」


 レヴはいやいや仕方なく、といった感じで、ルアティは片膝かたひざを着いて軽く頭を下げた。


「!! なぜ私はき……あるじに頭を下げている!?」


 ルアティは大人しく湯につかりながら思考するが、俺は答えをすぐに言ってあげた。


「『従者の強制』……それをお前に装備した。で、そっちは『奴隷の首輪』を装備した。意味がわかったな」


「どうやって私にこれ付けたか分かんなかったし、あんたにそれ付ける瞬間も理解出来なかったわ。マスターに手渡したと思ったら消えて、出てきたらあんたに付いてる状態で出てきた。ねぇ? マスター、これも教えてくれるんでしょうね?」


「ああ、だがルアティも理解できる状態になったらな」


「!! そん、な……。私は国に忠義を誓ったんだ! それが……それが得たいの知れない男の従者になっている、か……まるで理解できんな」


「さすが一国の姫さんだ。いや、姫ってのはやめよう。今は俺の従者だから『ルア』で、いいな。ルアは口では理解出来ないとか言いつつ状況把握はしている。なら、順を追って口に出してみろ。分からないだろうあいだの経緯は俺が説明してやる。レヴも聞いとけ。俺の能力の説明にもなるからな」


 風呂は長くなりそうだ。俺はアイテムボックスから冷えたカフェオレを取り出し、クピクピ飲み始める。


(あー、ギルドの食べ物ってどれも旨いんだな。これも買っといて正解だった。そういや『奴隷の首輪』は体の自由を奪うやつで言うなれば「く、身体は自由に出来ても心までは屈しない!」みたいなやつ。で、『従者の強制』は心を縛る力で『主のためになる行動しか出来なくなる』というもの、か……。ん? 何? レヴもルアもカフェオレ飲みたいんか?)







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