魔王城~風呂~
そんなわけで俺は服のまま風呂に浸かっている。もちろんレヴも一緒に。もちろんレヴは服は着てないし、俺は今、湯に浸かりながら服を脱いでいる最中だ。
「で? まずは俺の何が知りたい?」
大浴場の浴槽が血まみれにしながら、水に濡れ肌に張り付いて脱ぎづらいインナーを脱ぐ。
「まずはなんでマスターと一緒に入ってるのか? って質問からね」
「ん?
レヴは軽く握り拳を作り、質問を続ける。
「じゃあ、なんで私は裸なのかしら?」
「そりゃ、俺が脱がしたからだろ?」
レヴは広角を上げ、ヒクつかせる。そして握る拳が少し強くなった。
「へぇ~。私、脱がされた覚えないんだけど? マスターをここまで案内したら急に視界が真っ暗になって、気づいたら全裸で湯に浸かってた状況なんだけど、これってどゆこと?」
「具体的に説明すると『俺がアイテムボックスでレヴを回収して、アイテムボックス内でレヴの装備を外して、俺が湯に浸かってからレヴをアイテムボックスから取り出しただけ』だけど?」
「アイテムアイテムって私はアイテムか!?」
レヴは握りしめた拳を湯に叩きつけた。血の滲んだ水しぶきが俺の顔にかかる。が、俺は気にせず血で汚れた服を脱ぎ捨てていく。
「残念ながらそうみたいだ。で? 他には何か聞きたいことは?」
「そうね。マスターの名前は?」
「わからない」
「はぁ? 自分の名前がわからないって何よそれ。記憶喪失にでもなったの?」
「ああ、そうらしいな」
「はぁ!? ふざけないでくれる?」
「いや、レヴ。お前と会う前……つまり俺がこの世界に来る前の記憶がないんだ」
「……この、世界?」
「そうだ。この世界だ。異世界の勇者ってのは知ってるか?」
「当たり前でしょ。知ってるわよ。魔王様が戦ったもの」
「なら話は早い。俺はたぶん、その勇者と同じ世界か似た世界から来たと思う。この世界にある異世界の勇者の伝承を読んだ限りだとそう思えた。多少の脚色があるかも知れないからまったく同じとは断言はできないかな」
「……」
「あ、そうそう。記憶はないっつっても俺に関する記憶がないだけで俺は異世界の……俺の世界の知識はあるからそう言い切れる」
「……ふーん」
(レヴが「え? 何言ってんの? こいつ頭沸いてる?」みたいな目で俺を見てくる。こんなに冷ややかな目で見られると思ってなかったから結構つらい……)
俺は涙を堪えながら話を続ける。
「つまり俺は俺自身でも俺のことがよく分かってないんだ。だから俺に関することは聞かれてもわからん。それ以外なら答えられるよ」
「……じゃぁ--」
「あ! そうだ。この魔王城に俺がレヴに付けたような奴隷の首輪ってある? 新品の」
「……は?」
レヴが何か言う前に俺は思い出したことで思い付いたことを試そうとしてみた。
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