この城は

「ふー。ここまで来れば大丈夫そうだな。てか、もといたとこ通り過ぎた」


 魔王に追われた俺は十分過ぎる程の距離をとるため、ドラゴンのいた渓谷を通りすぎ、更に一直線に進んでいた。


「まぁ、いい。何かみえるまで進んでみるか」


 依頼を何個かクリアした俺は報告をしに一旦ギルドへ戻る予定だった。予定変更して気ままに空を飛んで行く。


 元々、ゴミ依頼の中で面白そうな依頼だけを自分でやって、他のつまらない依頼をレヴに擦り付ける予定でいた。残りの依頼はあと十数個程ある。内容はゴミ掃除だの、隣町の屋根の補修だの、そんな雑用ものしかない。


 しいてあげるなら、隣の国にはなるが、千を超えるゴーレム軍団の殲滅や徒党を組んでいるミノタウロス百頭の排除とか。ミノタウロスは通常、群れないはずなんだが。


 他にも似たような冒険者が『個』でやるには荷が重い……というか不可能と言って良いようなゴミ依頼もあるが場所が遠いからあまり気乗りしていない。


 


 しばらく飛んでいると黒々しい城が見えた。俺は高度を下げ、その城を観察する。魔物が城の周りを飛び、門番らしき者も魔物のようで、どこか空気が重く感じられた。城下町のようなものは見当たら無い。おそらく城の中で自給自足が完結しているのだろう。


(いやいや、まさかな……)


 俺はレヴを取り出し聞いてみることにした。レヴは出てきた瞬間、ツッコミを入れるため叫ぶだろうと踏んで、俺はアイテムボックスに腕を入れ、レヴの口を手で抑えながら引っ張り出した。



「むぐぐぐ~! むぐぐ! むぐぐぐー!!!」


「レヴ、聞きたいんだがあれは何の……いや、誰の城か知ってるか?」


「むんぐ! むぐむぐ!」


「おっと、そうだ。あんまり叫ばないでくれ。いいな」


「むぐ! む~ぐぐ、むぐぐぐ!」


 俺はレヴの口から手を離してあげた。レヴは俺を睨み付けながら呼吸を整える。


「ハァ、ハァ、ハァ……。い、いろいろ言いたいことはあるけれど、とりあえずマスターの質問に答えてあげるわ。……あれは魔王の城。城主はヴェディーユ・ドルヴィ」


「魔王ヴェディーユはどんなやつなんだ?」


「ヴェディーユは温厚なやつよ。魔族にも人間にも。だからか魔王様……魔王ゼロ様の城に一番近い魔王にも関わらず攻撃対象にもならなくて、まだ在るのよ」


「ふーん。でもさ、魔王ってのは本質的にはどいつも一緒なんだろ? 人間の敵っつーのはさ」


「ええ、そうね。強さもゼロ様と比べてしまえば弱いけど……それでも魔王とだけあって私より何倍も強いのは確かよ?」


「そうか。なら……レヴ、俺に付いてこい」


「わかったわ。でも、その前に言わせて」




 レヴは目を瞑り、大きくゆっくり息を吸い込み……--。







「ふぅーーーーーーーーーーーー……。ハァッ。……いきなりオークの集落をほろぼせだとか言われて、言われた通り殲滅し終わったと思ってマスターの方いたら視界が急に真っ暗になって、視界が晴れたら今度はドラゴンの群れのド真ん中にいて、マスターが指パッチンしたらドラゴンが一斉に死にだして、子供のかたきだと言わんばかりにトゥルーレッドが出てきて、またしてもマスターが何かポーズとったらトゥルーレッドがバラバラになるし、魔王城の場所を聞かれて答えたらゼロ様がいる魔王城にもう着いてたし、マスターが城ごと潰すのかと思ったら『城だけ』消えたし、そしてそのことに驚いていたらまた別の場所にいるし、ゼロ様とかゼロ様の配下からどうやって逃げてどうやったら五体満足でいれるのかわかんないし、今、目の前にはヴェディーユの城があるし、もしかしたら、いや、もしかしなくても今からゼロ様の城にした時と同じように『城だけ』けしに行くの!? なんなの!? マスターのその能力って? 何回か見せられたけどわけわかんないわよ! で、ところでいつまで私達は全身ドラゴンの血を浴びたままなの!?」








(なげーな、おい)







 ……--ツッコミを入れた。






 俺はレヴのツッコミ溜めたツッコミを聞く。レヴは肩で息をする。そして魔王ヴェディーユの配下の魔物達に囲まれる。













 -第三章・『魔王も魔族も含め』魔王城蹂躙開始-






「って、今更かよ!」

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