アイテムボックスに回収される人達ーその②

ーアイテムボックスに回収される人達その2ー


夜の戦場には夜の魔物や魔人が出てくる。


夜の戦場には夜のハンターが出てくる。


昼には昼の、夜には夜の戦場がそこにはある。



 夜に活発になる魔物はアンデッドやデーモン、夜行性の獣達だ。夜の魔人というのはバンパイア、悪魔、人狼などである。


 そしてそれらを狩る『専門家』のハンターがいるーーーーー。

















 俺の名はエルトマ・アーシュイナー。バンパイアハンターだ。アーシュイナー家の長男で俺が幼い頃、バンパイアに俺以外の家族を皆殺しにされたことがきっかけでハンターになったというしがない専門家だ。


 『専門家』は大体俺みたいなやつが多い。家族を殺された。親友を殺された。恋人を殺された。だから復讐するために…、自分と同じような人を作らせないように…、そいつらを、その種族を『専門』に狩るにハンターなる。専門家になるきっかけってのは往々おうおうにして復讐するためだ。


 そして、復讐を果たした専門家は何かにとり憑かれたかのようにその種族を根絶やしにしようとする。きっと収まりきらないのだろう、復讐の火が。それだけじゃなくとも、他の人に自分と同じように辛い思いをさせたくないってのもあるんだろうが…。



 まあ、俺もそんな感じだ。ただ他の専門家と違い、俺は運が良かった。バンパイア狩り『専門』の固有能力が発現したからだ。


 俺の能力は『純銀生成』だ。バンパイアによく効く銀。しかも純度が100%だ。俺の2丁のハンドガンとその弾丸、そしてショートソードが俺の能力で生成した銀を元に造られたものだ。純銀の弾丸なんてのは他のバンパイアハンターじゃとてもじゃないが持っていない。仮に持っていたとしても確実に止めを刺す用に2、3発分あるぐらいだ。


 そんな訳で、俺の能力は恵まれている方だ。他の専門家は固有能力が発現しても、たいしてその専門の相手に効かないものだったりするし、そもそも固有能力が発現しない人もいる。てか、発現しない方が圧倒的に多い。


 俺の知り合いにゾンビハンターの専門家がいるがそいつは固有能力が『触れたものを殺す』という能力だ。条件付きだったが。ゾンビという死体相手にはまったく無意味の能力。と、嘆いていたが、固有能力が発現するだけでも恵まれている方だ。


 俺は本当に運がいい。固有能力も発現したし、今だ俺は死んでいない。復讐を果たすと誓い、夢半ばでくたばった同業者も大勢見てきた。ただ、唯一、運がないと思うのは復讐したい固体のバンパイアとまだ会っていないことだ。あの時の…。家族を殺されているところを、隠れて震えてただ見てるしかできなかった時に見たあのバンパイアに。













夕暮れ時、目が覚める。


 配給される夕飯を食べ、いくさの準備をする。俺の場合は剣の手入れやハンドガン用の『火薬』の準備ぐらいだ。


 剣の手入れは刃こぼれがないか歪みがないかを見るくらいですむ。朝方あさがた、戦場から戻ってきて寝る前に血や汚れは落とすのだがそれ以上は起きてからやる。


 今の俺の固有能力なら弾倉に直接、『純銀弾』を生成できるから後はその弾を撃ち出す為の『火薬の弾倉』がいる。俺のハンドガンは特注品で『純銀弾生成用の弾倉』と『火薬の弾倉』の2連弾倉構造になっている。


 もう1丁のハンドガンはバンパイアを狩るついでに倒した爆炎竜とか言われるやつの部位で造ったもので、ハンドガンのハンマー部分がトリガーを引くと勝手に爆発するという代物しろものだ。よってこっちには火薬の弾倉は必要ない。火力は高いが使いすぎると銃口が歪んできたりするから細かなメンテナンスが必要だ。


 メインで使うのは前者のハンドガンだ。どちらも良し悪しがあるから使い分けている。



(やつはこの戦場にいないのか?)


武器のメンテナンスをしながら考える。


そう、俺の家族を奪ったあのバンパイア。


「それとももうこの戦場でくたばったか…。まぁ、いずれにせよ俺はやつの姿を見るまではーーー。」


(見るまではこの戦場で生き残る。そしてやつが死んでいようが生きていようが俺が必ずやつの脳天に俺の純銀弾をぶち込む!)


 ここは夜戦用ハンターのテント内だ。周りに人がいるから、独り言も途中でめて心の中で改めて決意する。











俺の復讐はまだ果たせてない。



 としはもう29だ。ハンターになって14年。専門家と呼ばれるようになって9年。もうベテランハンターだ。こんな戦場で死ぬようなやわなやつでもない。今までも数多くのバンパイアを消してきた。だが、まだ俺の復讐は果たせていない。俺はこの戦場で必ず生き残り、復讐を果たす。





ーーーいくさの準備が終わった。


「そろそろか」


 昼の戦場から夜の戦場に変わる時、俺はコートを羽織って戦場に向かう。










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