第18話 子供の作り方


「えっ、キスじゃない? じゃあどうやって子供を作るんですか?」


 ヘルヴィは真実を伝えようと、できる限りしっかりと教える。

 今後の夫婦生活に関わるからだ。


 しかし……。


「えっ、は、裸で抱き合うんですか……!? む、無理です、恥ずかしいです……!」

「い、入れる? 何を、どこにですか?」

「えっ、いや、ええっ!? そ、そんなの……!」


 話を聞くたびに顔を真っ赤に染めて、恥ずかしがるテオ。

 頭の中で妄想してしまうのか、ヘルヴィのことを見ないようにしている。

 だがやはり気になるのか、ヘルヴィの顔や胸などをチラチラと見てしまい、さらに恥ずかしそうに身をよじらせる。


「はぁ、はぁ……くっ……!」


 そしてテオのその姿を見て興奮してしまうヘルヴィ。

 テオの目線が胸に来るたびに、ゾクゾクっとした甘い刺激が身体を走る。


 さすがに今襲ってしまうのは、テオが可哀想だからと我慢しているが……。

 もうヤバい。いろいろとヤバい。


 二人ともソファに座っているが、テオは端っこで身体を丸めて赤い顔を隠そうとしている。

 ヘルヴィは襲わないように端っこにいるが、ちょっと血走った目でテオを見ている。


 端から見たら夫婦には見えず、ヘルヴィが性犯罪者に見えてしまうかもしれない。

 しかしテオからプロポーズをした、ちゃんととした夫婦である。


 ヘルヴィは深呼吸をして、一旦自分を落ち着かせる。

 目も瞑ってテオを見ないようにすれば、すぐに冷静になることができた。


(本来ならこのまま初夜を迎えて、そのまま初めてを経験したかったのだが……テオの様子を見る限り、無理だな)


 子供の作り方を初めて知って、これだけ動揺しているテオに、「じゃあ実践しよう」というのは無理だろう。


(今日はこの姿、いや、テオと、こんな可愛い旦那と出会えたことで満足しようか)


 思えば今日の朝に初対面で、すぐに結婚した二人。

 ヘルヴィとしては流れで結婚してしまった感はあったが、その選択が良かったと思える。

 そうでないと、初めて会った男に初日で『初めて』を捧げようと思わないだろう。


(慌てなくても、これから何年、何十年も付き合っていくことになるのだ。気楽に、テオの心の準備ができるのを待とうか)


 目を瞑りながらそう考え、その結論に至って目を開ける。

 テオは両手で顔を覆い、まだ恥ずかしそうにしている。


「へ、ヘルヴィさんと僕が、裸で……あっ、ああ……むりぃ……!」

(可愛い)


 顔は見えないが、蕩けた顔をしているのがなんとなくわかる。

 これから数日、数週間はこの姿を見れると考えると、まだしなくてもいいかもしれないと思える。


「テオ、大丈夫か?」

「は、はい……その、大丈夫じゃ、ないです。恥ずかしすぎて、ヘルヴィさんの顔が見れません……!」

(可愛すぎる)


 今すぐ襲ってしまおうか?


 いや、ダメだ。

 今待とうとしたばかりなのに、こうも早く決心が鈍るとは。


 悪魔の心をこんなに揺さぶることができるのは、おそらくテオだけだろう。

 精神を犯す撹乱魔法でも、ヘルヴィが精神を揺さぶられることは全くないはずなのに。


「今日はもう寝るぞ。お風呂を沸かしてくれたのだろう? 先に入ってもいいか?」

「は、はい、どうぞ」

「私が入っている間に、顔を見られるようになってくれよ」


 そう言ってヘルヴィはリビングから出て、洗面所に。


 悪魔であるヘルヴィは、本当ならお風呂に入る意味などない。

 身体が汚れることはないのだ。

 たとえ血などで汚れたとしても、魔法ですぐに綺麗にできる。


 ただヘルヴィは、普通の女性のようにお風呂が好きだった。


 悪魔の服は、その悪魔次第ですぐに変えられる。

 だからヘルヴィは服を脱ぐことなく、意識するだけで服は消え去り、裸になる。


 純白の長い髪を後頭部でまとめ、風呂に入るときに濡れないようにする。

 シャワーは浴びない、好きでもないし意味がないから。


 お風呂場に入り、湯の温度を触って確認する。


「ふむ、ちょうどいい。それに足も伸ばせるほどの大きさだ」


 足が長いヘルヴィでも、悠々と伸ばしてくつろげる。

 それだけでいいので、特に贅沢は言わない。

 無駄に大きくても、落ち着かないだけだ。


 足から湯に入れて、肩まで浸かっていく。


「はぁ……いい湯だ。テオと私の風呂の温度は同じみたいだな」


 ほんの小さなことの相性でも、それだけで嬉しくなる。


 昔からこのぐらいの大きさがよかったが、今はもう少し贅沢を言いたくなる。


(いつかはテオと一緒に入りたいから、もう少し広いほうがいいな)


 そんなことを思いながら、ゆっくりとお風呂に浸かっていた。



「い、今頃ヘルヴィさんは、裸でお風呂に……いや、それは当たり前なんだけど……子供を作るには、僕はヘルヴィさんの裸を見ないといけなくて……うぅ……!」


 その頃テオは、妄想でさらに恥ずかしくなってしまい、いまだに顔から熱が引かない状態だった。

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