いつから大人だったろう。

真文 紗天

第1話

「あんなのに口説かれてときめいてんじゃねえよ!」

「口説いてくれない男よりよっぽどマシでしょ!」

幼馴染同士、気の置けない仲であることが今回ばかりは口論の激しさを助長させていた。

ぱんと頬が鳴った。

横顔にひりつく痛みが走った。

「昔からの仲でも礼儀ってもんがあるでしょ!!アンタなんか嫌いよバカっ!!」

呻くしかなかった。

平手打ちよりも

その言葉の方があまりに痛烈で

「……じゃあ同じ言葉で口説けばお前は靡いてくれるのかよ……くそっ」

ずっと隣にいてねと、そう笑いあったのはいつだったろう。まだランドセルも知らない小さな二人の記憶、想い人の背中はもう見えないほど遠かった。

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