【六人目】

 こめかみがズキリと痛みを訴えて、ユーイルは最悪な目覚めを迎えた。

 捕まえていたはずのマナ患者はすでに存在せず、牢獄にもたれかかるようにして眠っていたようだ。


「――チッ」


 ユーイルは舌打ちをすると、ボサボサになった銀髪を掻く。

 せっかくマナ患者を処刑できるかと思ったのだが、まさかいなくなるとは。そういえば、マナ患者らしい雰囲気がなかったし、本当のマナ患者ではなかったのだろうか。

 どちらにせよ、仕事を邪魔されたような気分である。ユーイルは不機嫌そうに牢獄から出ると、見知った金髪の少女が出口で待っていた。

 冷たい瞳で見下ろされ、ユーイルの機嫌はさらに悪くなる。忌々しげに舌打ちをしたユーイルは、自分を待っていた少女の隣をなにも言わずに通り過ぎた。


「心配しました」

「心にもねえこと言ってんな」


 少女の心配の言葉を一蹴し、ユーイルは脱いだままのガスマスクを装着する。

 その場に一枚の人物画を残していたのだが、彼はあえてその存在を無視した。楽しそうに笑う彼らとは対照的に、笑顔から逃れるように。

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