【三人目】

「ご主人たまー、ご主人たまー、もうおやつですよー」


 ゆっくりと揺さぶられる感覚に、ユノはようやく目を覚ました。

 霞む視界いっぱいに広がったのは、最近召喚したばかりの使い魔だ。彼もそういえば、異世界からやってきた人間だったか。

 顔を覗き込んでくる使い魔の少年に、ユノは「近いぞ」と苦言を呈しながら頭を撫でた。


「せっかくフェリシアさんがフレンチトースト作ってくれたんで、食べましょうよ。ね」

「うむ、そうだな。フェリシアの甘味はとても……」


 美味しい、と言いかけたユノは思い直す。

 不思議そうに主人へと振り返る使い魔の少年は、首を傾げて「ご主人様?」と問う。

 確かに美味しいと表現するのは最適だと思うが、今回だけはちょっと違うと思うのだ。そう、例えるなら。


「そうだな。フェリシアの甘味は、幸せの味だからな」


 自分で導き出した答えに、満足げに頷くユノ。

 使い魔の少年は事情を知らないけれど、何故か満足そうなのでユノに同意するように「そうですね!!」と元気よく反応した。


「よし、ナユタよ。急ぐぞ!! フェリシアのフレンチトーストが冷めてしまう!!」

「はーい!!」


 ユノは使い魔の少年を引き連れて、部屋から飛び出した。

 無人の部屋に、ぴらりと一枚の紙が落ちる。そこには美しく佇むユノが、たくさんの仲間と写っていた。

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