【アウシュビッツの悲劇】とは
むかしむかし、豊かな王国がありました。
豊かな王国には家族思いの国王様と女王様、そして心優しいお姫様がおりました。
ところが、お姫様は闇の騎士によって北の果てにあるアウシュビッツ城に連れて行かれてしまいました。
嘆く国王様は勇者を募りましたが、誰も立候補しませんでした。それもそのはず、お姫様のいるアウシュビッツ城の近辺は魔物たちの巣窟になっていて、迂闊に近寄れば魔物の餌になってしまいます。
お姫様を救うことができる勇者はいないかと国王は何度も民に呼びかけましたが、誰一人として応じる人はいませんでした。
「――私が姫君を助けに行きましょう」
国王の呼び声に応じたのは、歳若い少年でした。
少年は勇者と称えられ、王国の宝である女神の加護が与えられた魔剣を手に旅立ちました。たくさんの人が、彼を勇者と称えて見送りました。
少年の旅路は、決して楽なものではありませんでした。ドラゴンに巨大な狼に、視線を合わせただけで体を石に変える鶏とも戦いました。それでも少年は弱音を吐かずに、お姫様を助けるべくアウシュビッツ城を目指しました。
ようやくアウシュビッツ城に辿り着いた少年は、お姫様を助ける為に闇の騎士と戦いました。闇の騎士もまた闇の魔法の加護を受けた魔剣を手に、少年と三日三晩に渡って激しい戦いを繰り広げました。
軍配は少年に挙がりました。少年は闇の騎士の喉元に魔剣を突きつけて、お姫様を返せと言いました。
「姫は魔王の生贄として、その命を捧げよう」
闇の騎士は隠し持っていた短剣でお姫様の心臓を貫き、殺してしまいました。
勇者である少年は、姫君を救うことができなかったのです。
勇者から一転して「無能」と罵られた少年は、家族を失って悲しみに暮れる国王様の命令によって死刑が執行されてしまいました。
誰もがあの少年を無能だと罵りました。
誰もがあの少年を無能だと嘲笑いました。
そして一人だけ、少年の境遇に涙する神様がいました。
「こんな結末は、あまりにも可哀想」
姫君は生贄として殺されて、姫君を救えなかった勇者の少年は無能と言われて処刑されました。――この歴史を【アウシュビッツの悲劇】と呼ばれて、生涯に渡って語り継がれるのでした。
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