自作短編小説のウラ話 〜第4回 匿名短編コンテスト・光VS闇編 【闇サイド】参加作品編〜
KEN
ウラ話。〜無名作曲家の遺書〜
どんな闇を書こうかと考えながら「玉葱の歌」を聴いていたら、あらすじが浮かんだので書いたもの。
簡単に言うと「玉葱があれば俺たちは戦える!」みたいな趣旨の歌。お疑いの方は「玉葱の歌」で検索してほしい。そして可能ならば試聴してみてほしい。曲の一部は聴いたことがあるかもしれない。
「玉葱の歌」に「無名作曲家の遺書」のような逸話はない、筈。
◇
時代や場所の設定をもっと細かく指定した方が、読者にイメージしてもらいやすかったと思う。字数制限に引っかかったかもしれないが。主人公周りで決めていた事は、彼女のパーティーに一張羅のスーツで出席することと、万年筆で楽譜を書くこと、そして国が戦争に巻き込まれつつあることくらい。(スーツの描写は匿名コン参加時には抜けていた。反省)
◇
「彼女」は結局どうなったのか。本編では読者の想像に委ねる形で明示はしなかった。その方が作品として味わいが出ると判断した。
作者による裏設定は一応ある。それを公表するのは、必ずしも良いとは言えないかもしれない。でも供養のため書いておきたい。
①概ね主人公の想像通り、やむなく軍に曲を売り渡してしまった。その後両親と共に安全な国へ逃亡。(なぜ逃亡前に主人公へ連絡しなかったのか、あるいはできなかったのかは、想像にお任せする)
②「彼女」は始めから軍歌のメロディを作らせるつもりで主人公に依頼した。軍の要望通りにした「彼女」は国外への逃亡を準備していたが、報酬で揉めたため軍に殺された。
果たして読者の皆さんには、どちらの「彼女」が受け入れられるだろうか。それとも、もっと救いのない「彼女」が良かっただろうか。
◇
主人公に恋心はあったのか。
恋心と呼べる程ではないかもしれないが、「仲良くしたい異性」としては見ていただろう。軍歌を聞いた時に「彼女に恨みはない」と言っているが、実際は、彼女がどうして軍に曲を渡してしまったのかを延々と考え続けただろう。彼女が消えたと知った時には悲観的になったに違いない。比較的現実的で、何より自分が許せる結末を想像する事しか、主人公には出来なかった。
そんな主人公にとって、軍歌にアレンジされた自分の曲を毎日聞かされるのは一種の拷問に近いものだっただろう。加えて、その曲が戦争の空気を濃くしていた事も主人公には堪えていた。
戦争の末路をきちんと見届けた上で自分なりの責任を取ろうと考えたから、戦争が終わるまで自殺しなかった。新たな国境付近の海を選んだのは、一番死者が出たであろう場所、激戦区に近いと考えたから。あるいは、国外にいるかもしれない「彼女」に少しでも近づきたかったのかもしれない。
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