時と歯車の理想郷

メル

第1話 知の探求

それは今からもう何百年も昔のこと。

知を探求し続けた人類はついに人工知能を搭載した人型の機械――アンドロイドの創造に成功する。 人類とアンドロイドの共存によって世界が栄え、はや数百年。

これはそんな世界を支えているとある会社についてのお話。




「――うむ、では今日はじっくりと見学していってくれたまえ。

威厳のある声で男は言った。

「ありがとうございます!!

俺、タイヨウは無事大学院を修了し、さらに独自で研究を進めるべく中央都市まで赴いていた。

叡智管理局クロノス。

中央都市に位置する高層ビルが目印の会社で、人類が大昔アンドロイドを作り上げた後に開発した唯一無二の世界一の演算処理能力を誇る超巨大スーパーコンピュータ「クロノス」を保持、管理している機関に見学をしに来たというワケだ。

なぜかって?それはもちろん「知」の探求の為さ。

人類がなぜアンドロイドを作ったのか、そもそも人類が人工知能を開発した目的は何か、なぜヒトの形をする必要があるのか、数百年前のご先祖様が何を考えていたのかやどういう理屈で開発に至ったのかなどなど知りたいことはたくさんある。

俺がいた大学院では人類の人工知能技術を研究する学部があり、俺はそこで日夜研究にあけくれていたというワケだ。


「さて、せっかくの見学だからあまり口を出す気はないのだが、一つ。これだけは守ってもらいたい物がある。


ウキウキなのが顔に出すぎていたのか、少々眉間にしわを寄せて男、この会社の代表取締役が言った。


「はい、何でしょうか....?


「今日、ここで見聞きした物は誰にも話してはならない。絶対にだ。これが守れるのであれば今日の見学を許可しよう。


「わかりました....


まぁ、企業秘密とかもあるだろうし当然だよな。ともあれ、今日は端から端までくまなく見学させてもらおう。


「それでは、ごゆっくり。後の事はそこのアンドロイドが案内してくれるだろう。


「わかりました。ありがとうございます!!


エントランスで見学の手続きを行い、ゆっくりと進むと一人の女性が立っていた。

「始めまして。見学のタイヨウ様ですね。私は本日会社の案内を務めさせていただきます01号ミモザと申します。今日はよろしくお願いしますね。


「こちらこそよろしくお願いします。えっと....


「01号はいりません、ミモザで結構です。


「それじゃミモザさん。早速案内をしてもらえるかな?


「かしこまりました。それでは一階から案内させて頂きますね。


こうしてアンドロイドに連れられてこの国の叡智たる会社の見学が始まった。

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