Black Baby

月嶺コロナ

第1話 イベントの始まり

 あたしは北条ほうじょう 麻弥まや。女。人生に疲れた女。

 ろくな人生を送ってきてない。若い時は遊んで暮らした。金が欲しくて、援交していた時もあった。金には困らなかった。麻薬にも手を出したことがあった。中毒で死にかけたことがある。だけど、親が必死に止めて、何とか生きてる。親を悲しませることしかしてない。その親はもういない……。 






 --闇市。

 昔、世話になった。今日は一日だけ開く、特別な催しがあると聞いて来た。【欲しいモノが何でも手に入る】そう聞いた。そんな上手い話がある筈ない。そう思った。だけどそのことを教えてくれた男がこう言っていた。


『貴女自身は、自分には欲が無いと思っていますね? しかしそれは思い違い。心の底に閉じ込めているに過ぎません。貴女は自分の欲を知りたいと思いませんか?そう思われるなら、さあ……この場所へ赴くとよろしいですよ』


 そう言われて来た。あたしに欲しいモノなんて無い。強いて言うなら【死】。でも自殺はしない。出来る限り生きることが親への償いだと思ってるから。


「よぉ、麻弥か!? 久しぶりだな!」


 誰だこのおっさん。


「何だよ忘れたのか? 権太郎だ、富士田ふじた 権太郎ごんたろう

「……ああ、ゴンか」

「もうずっと来てなかっただろ? 今日はどうした?」

「……あんたに話すことはない」

「お、おい!」


 ゴンの手を振り払い、闇市の奥、また奥へと進んでいく。


「レディースアーンドジェントルメン!!」


 闇市らしからぬ声が響いてきた。何年も来ない内にこうも変わるのものか。


「これから始まるはビッグイベント! あなたの探しものはどこ? あっ見つけた! です!!」


 ………ふざけた催しだな。司会も、周りにいるヤツ等も活気に溢れてる。あたしは来る所を間違えたのか?


「ルールは簡単! 巨大迷路を一番早く攻略した人が優勝です! 優勝した人には、欲しいモノが何でも手に入る権利が与えられるのです!」


 本当に宣言した、あの司会。

 長いオープニングセレモニーが終わり、とうとうその訳の分からない催しが始まった。何故そんな催しをするのか。主催者側には何も利益を生まないのに……。

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