『死にたがりの聖女に幸せな終末を。』/特別1巻まるごと連載

西塔 鼎/電撃文庫

■0──記録番号1942‐12‐24(九号文書に付随した記録データより抜粋)


■0──記録番号1942‐12‐24(九号文書に付随した記録データより抜粋)


 恐らくはこれは、単なる自己満足なのだと思う。

 振り返ってみたところで──私が彼女たちにしてやれたことなど何ひとつなかったように思うし、どころか彼女たちと触れ合った経験だって、そう多いものではない。

 結局のところ私は彼女たちの物語とは関わりのない、赤の他人でしかなくて。

 だから私に、こんなことをする理由も意味も無いのかもしれない。

 こんなことをしたところで、私たちの犯した罪がゆるされるわけではないのだから。


 ……それでも。

 彼女たちに全てを押し付けて、全てを背負わせて。その挙げ句に何もかもを隠し通して、なかったことにしようとした──その片棒をかついだからこそ、私たちには真実をのこす義務がある。

 だから、話そう。

 何もかもを、今こそつまびらかにしよう。


 そうすることこそが私たちの負うべき責任であり──そしてこの神の箱庭で私が果たすべき、たったひとつの役割なのだ。

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