坂出の少女 9

坂出は雨だった。


商店街をしばらく歩いて行くと、右手にベーカリーの看板が見えて来た。


僕は店の中に入った。


「こんにちは」


彼女は振り向いた。


「まあ、黒住さん!」


彼女は僕を見るなり、驚きの声を上げた。


「ああ、びっくりしたわ。あなたが来るなんて、夢にも思わなかったわ」


彼女は、じっと僕を見つめた。


「こっちへいらっしゃい」


彼女はそう言って、店の少し奥まった場所へ僕を案内した。

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