坂出の少女 3

5月のある雨の日、僕に電話がかかってきた。


舎監室へ行き、受話器を取った。


「もしもし、黒住です」


「私よ」


「えっ、誰?」


「益岡です」


「えっ、益岡さん?」


「そうよ。わからなかった?」


「ああ。まさか君だとは思っても見なかったよ」


「今日、こちらへ来たのよ」


「今、どこにいるの?」


「女子寮よ」


「ぜひ会いたいな。そちらへ行くよ」


「そう。悪いわね」


女子寮へ行くと、玄関の所に見覚えのある傘が、立て掛けてあった。


僕は彼女の現れるのをじっと待った。


彼女は僕との約束を覚えていてくれて、会いに来てくれたのだ。


そう思うと、彼女の優しい心に感動し、なにか熱いものがこみ上げてくるのを感じた。

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