きのこ雲があがった日

姫亜樹(きあき)

キノコ雲があがった日

ぼくたちの苦しみを埋めるように

緑の草原に雪が降る


遠くの国でおきた事故は

キノコ雲をあげ家々を倒し

この星を厚い雲でおおった


それは最初

大勢の人々を殺すための

兵器だったのに

「人を便利にする道具」という

仮面をかぶり

ぼくらの星に広がっていった

楽な暮らしが当たり前の

生活の中で

ぼくたちはその道具の

本質を忘れ

安全を絶対だと思い込み

本当に

本当に小さなミスから

ぼくたちは終わりを迎えた


青い空に厚い灰色の雲が広がり

雪の降らないこの国に雪が降る

真白に広がった雪の大地の下で

ぼくらはやがて化石の生き物になる

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きのこ雲があがった日 姫亜樹(きあき) @Bungo-2432Da

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