猫猫ファンタジー
NEO
第1話 旅立ち
ここはどこだったか。
確かアーレスとか呼ぶ国のメンレゲという街。その周囲に広がる草っ原だったはずだ。
「おい、いつまでここにいるつもりだ」
俺はなにやら調べ物をしている相棒に声を掛けた。
「ちょっと待って、この薬草がこんな道ばたに生えてるなんて!」
相棒の答えに鼻を鳴らすと、俺は一応警戒態勢を取った。
ああ、暇なので簡単に自己紹介でもしておくか。
相棒は人間的に表現すれば茶トラの猫とかいう、生き物に分類されるようだ。
そして俺の猫場合は、サバトラの猫になるようだが、まあこの辺りはどうでもいいだろう。
「お待たせ。もう十分採取出来たよ」
「ったく、お前の薬作り好きは相当なもんだからな。んなもん、魔法一発で治せるだろうぜ」
俺は苦笑して、文字通り猫の身の丈に合わせたいぶし銀に光る杖をかざした。
「魔法じゃ病気は治せないでしょ。薬は必需品だよ」
相棒が笑みを浮かべた
「ったくよ。まあ、それで何度も助けられた身だからな。文句いうのはお門違いってもんだけどよ。街を出た途端これだぜ」
「ごめんごめん、本当に希少な薬草だったんだ。あとでちゃんと薬にしないとね」
相棒が楽しそうにいった。
ちなみに、俺たちは野良だった故に名前はないが、勝手に俺は「コーベット」、相棒は「ムスタ」と名乗っている。
「コーベット、本当に僕たちだけで大丈夫?」
「だって、声を掛けても乗ってこなかっただろ。まあ、俺たちって基本的に自分の縄張りから出たくないからな。よりによって、街から出るってだけでも恐怖心の塊になるさ」
俺は空を見上げて笑った。
「うっかり、僕は乗っちゃったけどね。回復役がいないと、怪我したとき困るだろうし」
相棒ことムスタが笑った。
「おう、お前がいてくれると安心だぜ。強烈な回復魔法の使い手だからな」
「……強烈な回復魔法ってなに?」
俺は背後にある住み慣れた街を一瞥し、草っ原の中に踏み跡で出来たこれでも一応街道を歩いて進んだ。
「それにしても、本当に魔法使いだけで大丈夫かな?」
相棒が弱気な事をいったので、俺は背中に猫パンチを叩き付けた。
「い、いったい!!」
「そりゃ、痛くしたからな。考えてもみろ、俺たちがちゃんと剣を振れると思うか。下手すると下敷きになって、大怪我しちまうぞ。唯一使えるのが魔法だから、それりゃ必死で覚えたんだが、回復魔法までは無理だったぜ」
「僕は逆だな。まずは回復魔法を覚えたところで、いきなり旅に出るとかいい出すんだもん。まあ、僕と合わせて一人前って事で、ちょうどいいんじゃない?」
相棒が小さく笑った。
「そうだな。まあ、よろしく頼むぜ!」
「うん、僕の方こそ。知ってると思うけど、僕ってトロいからね」
相棒が俺に向かって苦笑した。
「問題ない、知ってるからなんとかする!!」
俺が笑うと相棒も笑った。
まあ、なんとでもなるさ。
俺はまだみぬ世界に、期待を膨らませていた。
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