Kaleido
槻坂凪桜
第1話
…丁度、あの日も澄んだ春の夜だった。
雲一つ無い空で、満月が皓々と輝いていた夜。
満開の枝を揺らす徒桜。
抱き締めたバスケットボール。
窓辺に零れる花びら。
弱く波打つ線と途切れかけの電子音。
そして…白い世界に横たわる『彼』と、微かに動く一片の唇。
「ねえ、独りにしないでよ…もっと一緒にいたいよ…!」
「ねえ…ッ!」
「…ごめん、な…」
「大好きだよ、零音」
……寂しそうに笑った彼の、夜桜のように儚い姿は、今も瞳の奥に焼きついたまま離れない。
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