捕まった軍人が優し過ぎてつらい。
イデア
1章 出会い
第0話 生きている意味
※残酷描写あり
「……もうやだ……」
生きているのが辛い。
そのくせ、死ぬのが怖い。
そして、いつ死ぬかは分からない。
今日かもしれないし、明日かもしれないし……もしかしたら、この戦争を生き残れるかもしれない。
私、
だってもう帰る家なんてないし、ご飯もない。周りにはそういう境遇の人しかいない。裕福な人はとっくに殺されたんだもの。
ここ、エストラルはかつて都会だった。割と、今でもその名残がある。
古びたビル、廃墟になったデパート、ホテル、マンション。
何故みんなそこに住まないのかって?
……そこにいても、すぐに殺されて終わりだ。
私たちは、今、大国であるロステアゼルムから攻められているのだから。
私たちが最初に見たのは、大型の銃だった。名前とか知らないけど、取り敢えず一発撃てば人が沢山死んじゃうような、そんな銃だってことは分かった。
そしてたくさん兵士がきて、まずは片っ端から人を殺していった。
大量虐殺だよ。
見る目もなかった。
なんとか逃げ延びた人たちの多くは、その後見つかってどこかに連れていかれちゃった。
噂では、どこかで労働させられているらしい。
──私の家族は、私の目の前で殺された。
……ううん、正確には、私の背後で殺された。
「お前だけは、逃げろ」って、お父さんが私の背中を突き飛ばしてくれて。
運よく街路樹の茂みに隠れられたんだ。
その直後だった。
銃声と、断末魔。
いやだ、聞きたくない。逃げたい。
そう思ったけど、脚が棒のようになって動かなくて、無理だった。
嗚咽を必死に隠すので精一杯だった。
辺りに静けさが戻った後、私はそっと街路樹から這い出た。
……無残だった。
私のお父さんとお母さんは、あっけなく殺されてしまった。
それも、ふたりは血がほとんど出ていなくて、ほんとうに綺麗で。
今にも生き返りそうなのに……!!
何度泣いても、叫んでも、無駄だった。
もう、私を守ってくれる人はいない。
大丈夫だよ、って声を掛けてくれる人がいない。
大好きだった、お父さんとお母さんは、いない。
放心状態で、私は街中を歩き回った。
もういいや。
私も殺してよ。
せっかくお父さんに守ってもらった命だけど、このままじゃ、辛いよ。
そんなとき、遠目に人影が見えた──
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