死なない少女と余命を受けた少年。

白咲

第0話 プロローグ

 俺たちが出会ったのは7月末。何もかもが熱気でどろどろになって、目が霞んでいた。全部投げ出してしまいたくなるほどの鬱陶しさで。

__変なやつ。それが君への第一印象。だけど、触れたら消えてしまうんじゃないかってくらい朧げで、すごく綺麗だった。


「…なに、見てんの?」


俺は静かに聞いた。


「…町の人々」


彼女は風鈴が奏でるような透明な声で呟いた。


これが初めての、君と俺があの暑い夏に交わしたことば。

君に出会ってからすべてが変わった。世界に色がついて、生きてるってどういうことなのかを実感することができて。

今はもう伝える術なんかないけれど。もう一度だけ逢うことができるのなら、俺は迷わずにこう言うだろう。




___ありがとう。




これは、不思議な少女とその少女に余命宣告をされた俺の、短くて長い、そんな物語だ。

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