第30話 中間テスト

 かなでたちとの交流から数日後、いよいよ中間テストの日がやってきた。





「うう……ちゃんとできるといいのだけれども」


 やっぱり少し、緊張する。





「まあ、今回は受験から間もないし、大丈夫なのではないか?」


 久朗くろうはわりと、余裕があるようだ。





「テスト前に単語帳を見直しておかないと」


 久朗みたいな天才肌ではない僕は、地道な努力が必要なのである。





 学校につくと、れんとみかんが既に教室内にいた。


 漣が必死に、みかんにラストスパートをかけさせているようである。





「みかん、この問題はこの言葉を知っていれば解けるのですよ。前にもやったでしょう?」


「みゅ……どうも古文、漢文は苦手にゃ……英語ならば、何とかなるのに」





 みかんはどうも、そのあたりが弱いようだ。


 相変わらず苦戦している。





「おはよう、漣、みかん」


 僕は二人に挨拶をする。





「おはようございます。結城ゆうきさん」


 漣がそれに対して、答えてくれた。





「なにやら苦戦しているようだな……私も手伝ったほうがいいか?」


「ぜひお願いします。みかんの頭に、少しでも詰め込んでおかないと」


「みゃ! これ以上詰め込んだら、頭がパンクするにゃ!」





 久朗の提案に漣が賛成し、みかんが異議を申し立てる。





「大丈夫です。勉強して頭がパンクした人間を、私は知りませんから」


 漣の無慈悲な言葉に、みかんがガクッと脱力した。


「至高の知識が、脳髄のうずいを消滅させるにゃ……」





 それから少しして、あきらもやってくる。


「よっ、おはよう! もうみんな揃っていたんだな」





 みんなも晶に挨拶する。





「晶はテストの勉強、大丈夫なの?」


 僕は気になって、聞いてみた。





「ぼちぼちといったところかな。早く中間テストを終わらせて、体育祭に備えたいぜ」


 少し運動不足になっていることの方が、晶にとっては重要なようだ。





「はい、席について。朝礼が終わったら、テストを開始します」





 まい先生がやってきた。


 いよいよテスト……緊張する。





 午前中は国語と古文、漢文で……午後はヒーロー科目だ。


 午前のテストが終わり、お昼を学食で食べることにする。





「みゅ……オーバーヒートにゃ……甘いものと冷たいものを早急に補給する必要があるにゃ……」


 みかんがまるで、頭から煙が出そうな表情でとぼとぼと学食に向かった。





「普段から勉強しておけば、このくらいは楽にできるはずですよ。自業自得です」


 漣の厳しい指摘が追い打ちになっている。





「僕たちも、お昼にしよう……僕はかつ丼がいいかな?」


「試験ではないのだから、別にカツにこだわらなくてもいいのでは?」





 久朗と話をしながら、学食に向かった。





 学食では僕はかつ丼、久朗は限定のサバみそ定食を注文する。


 晶は親子丼の大盛り、漣はAランチ、みかんは……AからCまでの全てのランチを注文したようだ。


 疲れていても、食欲は相変わらずのようである。





「疲れた頭に、甘いデザートが染み渡るにゃ~!」


 Aランチのデザートの牛乳プリンを食べながら、みかんが幸せそうに口にした。





 午後はヒーロー科目だ。





「身体の運動をそのままタクティカルフレームに連動させるシステムをなんというか……舞先生の授業でやっていた問題がそのまま出ていたよ!」





 やっぱり舞先生は、授業が上手なようだ。


 要点を押さえた授業だったため、テストの問題もそれに沿ったものになっている。





「これならば、いい点数がとれるかも」


 僕も少しだけ、気が楽になった。





「うむ……満点を狙ったのだが、一問少し難しいものがあったからな。どうなることか」


 久朗の悩みは、僕とは次元が異なるようだ。





「みんな、お疲れさま。明日も試験があるから、頑張ってね!」


 舞先生の言葉で、帰りのホームルームが終了した。





「なあ、何か甘いものを食べに行かないか?」


 晶が僕たちに提案する。





「みゃ。糖分の補給が必須」


 みかんも乗り気のようだ。





「そうですね。私も少し、甘いものを口にしたい気分です」


 漣もそういっているし、どこにしようか……?





「そういえば、ソフトクリームの新商品がマイクロストップで出ていたな。そこでいいんじゃないか?」


 久朗がそう提案する。





 マイクロストップならば、芙士高のすぐ近くだ。


 たまにはコンビニで食べるのも、悪くないと思う。





「そうですね。そうしましょう」


 漣の言葉に、みんなが頷いた。





 マイクロストップに到着し、僕たちはレジで注文を行う。


 マイクロストップは普通のコンビニと違い、イートインのスペースを広く設けているのが特徴だ。





「ソフトクリームが、美味しい~!」


 疲れた頭に、甘いものが染み渡る。





「みかんは……スイーツのコーナーからも、商品を調達したのだな」


「みゃ、このくらいエネルギーを消費したのだから、補充しないと」





 みかんはソフトクリームだけではなく、スイーツも二つ購入したようだ。





「あまり食べすぎると、また太りますよ?」


 漣がたしなめるが、どこ吹く風の様子。





「明日は理系科目だからな。みかんにとっては多少楽なんじゃないか?」


 晶が慰めるように、みかんに告げた。





「私は逆に、憂鬱です……平均点は取れると思うのですけれどね」


 漣はどちらかというと、文系科目の方が得意なようである。





「さて、そろそろ帰って勉強するか。結城もそれでいいよな?」


 久朗の提案に、僕は頷いた。





 家に帰って、テスト勉強の続きをする。


 赤点を取らないように、しっかり頑張らないと! 

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