第三章
第27話 二年生たち
4月が終わり、5月になった。
「うう、そろそろ中間テストか……」
僕が少し嫌そうに、口からもらしてしまう。
「あんなものは、予習と復習をしっかりやっておけば、ある程度の点数は取れるものだろう?」
「そして、中間テストが終わったら体育祭だな」
この
生徒全員が参加するものなので、結構大きなイベントだ。
「でも、ヒーロークラスはどういう扱いになるのかな?」
ふと疑問を抱いて、僕が久朗に問いかける。
ヒーローの運動能力はほかの生徒を圧倒するし、人数も少なすぎるし……。
「まあ、そのあたりは何かしらの調整が入るのだろうな」
笑いながら久朗が、それに応えた。
クラスに入ると……
そしてみかんは、机に突っ伏して爆睡している。
ここ数日で見慣れてしまった、おなじみの光景だ。
「よっ、
晶が僕たちに気づいて、挨拶をする。
「おはようございます。結城さん、久朗さん」
漣もこちらに気づいたようだ。
ちなみに、焼き肉を一緒に食べたりして仲が深まっているので、みんな下の名前で呼び合うようになっている。
仲間という感覚が強くて、個人的には嬉しい。
「みゅ……もう朝かにゃ?」
みかんが目をこすりながら、こちらに声をかけた。
机の上のでこぼこが肌に跡としてついてしまっており、かなり間抜けな印象を受ける。
「そろそろ起きたほうがいいよ。もしまだ眠いようだったら、顔を洗ってきたら?」
僕はみかんちゃんに、そう勧めた。
それから少し時間がたって、朝礼の時間がやってきた。
「みんな、中間テストの勉強は進んでいる?」
「私は大丈夫だが……結城とみかんが、少し心配かな」
久朗が先生の問いに答えた。
「まあ、ヒーロークラスはほかの学部より、勉強することが多いからね……補習にならない程度に頑張ってくれれば、無理はしなくていいわよ」
舞先生のこういうところが、僕としてはありがたいと感じている。
「で、中間テストが終わったら、体育祭なんだけれども……ヒーロークラスは特別に、模擬戦闘が行われるの」
それは、初耳だ!
「相手は二年生。一年でどれだけ成長したかを確かめるのと同時に、そこまで力を高めないといけないというモチベーションを与えるためにやることになっているの」
なかなか合理的な理由のようだ。
「ちなみに二年生のチーム名は、『メギドファイア』っていうの。メンバーは5人で、
名前だけを言われても、ピンとこない。
そして、ミーシャだけちゃん付けであるところも、少し気になるところだ。
「結城と久朗は、三人には合っているわよ。面接のときに、金色の大型バグと戦ったことは覚えている?」
もちろん。
あの強烈な戦闘は、いまだに強く記憶に残っている。
「あの時回復をしてくれたのが、楓さん。そして援護射撃を行ってくれたのが実くん。最後に落とし穴を作って足止めしてくれたのが、良くんよ」
あの時の三人だったのか!
「そういえば良に確か「性別詐欺」なんて言われていたよな?」
久朗がちゃかす。
そうか、彼が相手……俄然、やる気が出てきた。
「一応簡単な戦闘スタイルも教えるわね。楓さんは回復と支援が得意で、薙刀での近接戦もこなすヒーラータイプよ」
接近戦もこなせるとなると、最初に倒すのは少し難しいかもしれない。
「実くんは狙撃もできるけれども、普段は二丁拳銃と格闘をメインに戦っているの。ガ〇=カタって知っている?」
接近戦も遠距離もできる、オールラウンダー……これも、手ごわそうだ。
「良くんは、トラップを生み出す能力を持っているの。スネアや落とし穴みたいな搦め手が得意ね」
文と久朗の戦闘で搦め手の有効さを実感しているので、これも注意すべき相手のようだ。
「ミーシャちゃんは、長いクォータースタッフで戦うの。身軽に舞うような戦い方は、結構カッコいいわよ」
軽戦士のようなスタイルをとるようだ。
「最後のガインは……正直、一番の強敵かもしれないわね。何しろタクティカルフレームなしで、バグと戦えるほどの猛者だから」
!?
「2メートルを超す巨体なので、専用の機体を作成中なの。で、それがない現状でもアントくらいならば余裕で倒すことができるという、ある意味化け物みたいな子ね」
そんな相手までいるのか……。
「正直、今の一年では勝ち目はほぼないと思っているわ。ただ、善戦できることを示してアピールするには絶好の機会よ」
予想以上に大変な体育祭になりそうだ。
いったいどこまで、食らいつくことができるのだろう……。
「あ、それと一応、体育祭よりも中間テストが先だから、そこは注意してね」
忘れていたかった事実を、舞先生が付き付ける。
うう……そちらも、頑張らないと。
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