第9話 自分の機体
校庭に行くと、タクティカルフレームが並んでいた。
見た目はアプレンティスとそれほど変わりがない……どころか、むしろ簡略化されていて、弱そうに見えるのだけれども……?
「この状態だと、弱そうに見えるわよね」
いぶかしげな表情をしていた僕たちに、
「まあ、まずは騙されたと思って、搭乗してみてちょうだい」
タクティカルフレームは、最初の一回だけはマジックテープやベルトなどを使って体に固定し、登録手続きを行う必要がある。
お互いに協力しながら、フレームを身に着けた。
「それでは、パーソナライズを行います。キーワードは『セットアップ』で」
「「セットアップ!」」
まず、僕と
発せられた言葉とともに、機体の中心部にある回路が起動し、機体そのものの形が変化していく。
「これが、パーソナライズか!」
アプレンティスではありえない反応に、興奮を隠せない。
「終わったら、機体の名前を教えてちょうだい。ARゴーグルの右下に、記載されているはずだから」
舞先生の言葉に従って、右下を確認してみた。
「僕の機体名は……オウスってなっているよ」
「私は、レイヴンだ」
オウス……ちょっと不思議な響きではあるが、悪くはない。
そして久朗のものは……ちょっとだけ、カッコいい名前かも。
久朗の機体は、黒をベースにしたものだ。
頭に短いアンテナが立っていて、鋭角的なフォルムになっている。
また背中の部分には、小型のバーニアとウイングらしきものが搭載されていて……もしかして、飛行可能なのだろうか?
「どうやら無事、パーソナライズが終了したようね。それでは残りの三人も、どうぞ!」
舞がそう促した。
「「「セットアップ!」」」
変形が終了し、全員無事にパーソナライズが完了したようだ。
まず、晶の機体は白と銀、そして水色のクリアパーツをベースにした、すらっとしたフォルムの機体だ。
手の部分にガントレットのようなパーツが組み込まれており、格闘戦を前提とした機体であることが想像できる。
次に連の機体は、灰色ベース。
そこに紫色のアクセントが加わっており、更に腰の部分にスカートのようなパーツが組み込まれている。
胸の部分には八角形の鏡のようなパーツが組み込まれていて、どことなく法術師のような雰囲気を醸し出している。
最後にみかんの機体は、水色がベースになっていて、オレンジのアクセントが入っている。
やや重厚なフォルムで、肩の部分にウエポンラックが搭載されている。
またバックパックも大きめで、何か格納されているようだ。
「俺の機体の名前は、ディアマンテらしいな」
晶が確認して、機体名を告げる。
……一人称が「俺」って、ますます男の子っぽい感じなんだけれども……。
「私の機体は、オーニクスですね」
漣も、機体名を読み上げた。
悪くないと感じているようで、声が明るい。
「……みかんの機体名は、トゥルケーゼ。悪くない」
みかんも、どうやら機体の名前を気に入ったようだ。
舞が「あ! 」と、何かに気づいたようだ。
「自分自身の機体が見えないと思うから、今から見せるわね――『マジックミラー』――」
魔法によって機体の前に、鏡が召還された。
僕の機体は、白がベースで赤と青のアクセントが用いられている。
フォルムはやせ形、脚部や腕部に小型のバーニアやローラーが組み込まれており、機動性や瞬発力を高める設計になっているようだ。
自分で言うのもなんだけれども、結構カッコいいと思う。
「ふむ、こんな感じなのか」
「俺の機体も、なかなかだな!」
「悪くないデザインです」
「にゃむ。ずっしりとしていて、これはこれでいいの」
全員、自分の機体に対して愛着を覚えたようだ。
「この、パーソナライズができるかどうかというのが、タクティカルフレームにおいて大きな分岐点なのよ」
舞が説明する。
「昔の機体はこれができなくて、バグに対しては物量作戦に近い部分があったの。それから試行錯誤して生まれたのが、パーソナライズのためのシステム、『プラーナコンバーター』というわけ」
そして、そのプラーナコンバーターを生み出したのが、冬花コーポレーションである。
そのため舞も、自慢げな感じで紹介していた。
「さ、それでは
舞がそう告げる。
「あ、一応武器などがきちんと入っているか、確認しておいて。前に練習用の武器でバグに挑んだ、おっちょこちょいな子もいたようだし」
……誰とは言っていないものの、久朗のことで間違いないだろう。
みんな気を引き締めて武器の確認を終え、除装プロセスを行った。
「明日から、本格的に授業が始まるからそのつもりでいてね」
学校生活の最初の一日が終了した。
帰ろうとした僕たちに、みかんが声をかけてきた。
「にゃ。親睦を深めるために、学校の隣にある『
悪くないアイデアだったので、採用することにする。
僕たちは両親に昼食はいらない旨のメールを送って、お店に行くことにした。
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