けもフレΩ

荒熊スカル

第1話 オイナリサマ

???「…か……」


???「……さい…」


フレンズ「…だれなのだ」


フレンズ「ぬぅ…」


一人のフレンズが目覚める。


フレンズ「!?」


フレンズ「ここは…どこなのだ…」


フレンズ「ううっ!」


薄暗い荒れた地に濃いホコリまみれの風が吹き荒れ、昼なのか夜なのかもわからない。


フレンズ「ひどい空気なのだ…」


霧のような景色のむこうから奇妙な影がたくさん接近してくる。


フレンズ「だれかいるのだ?」


その姿を確認するが早いか、怪物そのもののそれが突然襲いかかってきた。


フレンズ「なんなのだ!お、おばけなのだ」


彼女は怪物の包囲から逃れるように逃げ出した。


その先に薄ぼんやりと光る崩れかかった建物を見つけ、入り口と思しき場所から建物に飛び込んだ。


荒れ放題の内部に隠れる場所を探すが、怪物たちは建物の入り口でもぞもぞとうごめくばかりで中には入ってこない。


そのとき、彼女は建物の奥に別の気配を感じる。


フレンズ「!!」


???「怖がらなくても大丈夫です、わたしの呼びかけに応えてくれたのはあなたですね」


フレンズ「何者なのだ?」


ぼんやりと薄いフレンズの形をした影が語りかける。


???「アライグマ…あなたなのですか、少し意外です」


フレンズ「アライグマ!?それがアライさんの名前なのか…あれ?なのだ」


???「私はオイナリサマ…そう呼ばれていました」


アライさん「オイナリサマ?ここはどこなのだ?アライさんはなぜここにいるのだ?」


オイナリサマ「ここは、かつてジャパリパークと呼ばれていた場所。あなたはフレンズ…かつてこの星を支配していた別のけものの力を得た存在です」


アライさん「そういわれても、さっぱりわからないのだ」


オイナリサマ「そうですね…私はこのままではここから動けません、アライグマ、これを授けますので私を外へ連れて行ってくれませんか?」


アライさん「アライさんでいいのだ、これは何なのだ?」


オイナリサマ「わかりました、アライさん。これは私のお守りです。これを外へ運んでいただければ私も外へ出ることができます」


アライさん「嫌なのだ!外はバッチくて変な化け物がうろうろしているのだ、ここにも入ってくるかもしれないのだ。怖いのだ」


オイナリサマ「ここは…弱いですが私の結界が張ってあります。あの怪物はセルリアンという我々フレンズの宿敵です。彼らと対峙たいじする力は私が授けます…」


アライさん「せるりあん?」


オイナリサマが両手を上げる。すると光の柱がアライさんを包んだ。

しかし、直後にオイナリサマの顔が曇る。


オイナリサマ「…そんな…まさか…あなたは何の技も持っていない…そんなはずは」


アライさん「どうしたのだ、失敗したのだ?」


オイナリサマ「お願いです、アライさん。ほんの少しで構いませんので、外の様子を見せていただけませんか?」


アライさん「……わかったのだ、アライさんにおまかせなのだ。でもこのお守りボロボロなのだ。後でアライさんがきれいにするのだ」


オイナリサマ「そうですね…ぜひお願いしたいところです…」


アライさんはお守りを首から下げ、恐る恐る外へと出た。


オイナリサマ「うっ!これは!想像していた以上にひどい有様です…わたしの呼びかけに応じたのがあなたであることが少しわかった気がします。他のフレンズであればとても耐えられないでしょう」


アライさん「アライさんだって耐えられたものじゃないのだ!戻るのだ!」


そう言ってアライさんは再び建物の中へと戻った。


オイナリサマ「…」


アライさん「それにしてもお腹がすいたのだ…」


オイナリサマ「少し待っていてくださいね」


手を体の前に掲げ、何やら集中しはじめたオイナリサマ。


すると光の粉とともにおまんじゅうのようなものが現れた。


アライさん「ふわぁー!おいしそうなのだ。食べていいのだ?」


オイナリサマ「どうぞ、お食べなさい」


そう言うが早いか否か、アライさんはおまんじゅうを半分に割り、片方をオイナリサマに差し出した。


アライさん「オイナリサマも半分食べるのだ」


オイナリサマ「ありがとう、でも私はもうそれを必要とする肉体を持っていません。アライさん、全部お食べなさい」


アライさん「そうなのか…何だかかわいそうなのだ…」


そういって申し訳なさそうにアライさんはおまんじゅうを食べ始めた。


アライさん「食べたら眠くなったのだ…ふわぁ」


オイナリサマ「ゆっくりとおやすみなさい、アライさん」


その様子をやさしく見守りながらオイナリサマは考えこんでいた。




しばらく後、アライさんは目を覚ました。


オイナリサマ「お目覚めですね、アライさん」


アライさん「おはようなのだ、オイナリサマ…ってやっぱり夢じゃなかったのだ…」


ゆっくりとオイナリサマは語り始めた。


オイナリサマ「アライさん…我々が生きるためにはサンドスターが必要なのです。あなたにごはんとしてあげたジャパリまんも私に残るわずかなサンドスターを使って作りました」


アライさん「サンドスター?がないとどうなるのだ」


オイナリサマ「フレンズになる前のけものへと戻ってしまうでしょう。しかし、外のこの状況ではけものではとても生きていけないでしょう…」


オイナリサマ「アライさん、無理を承知でお願いします。わたしの記憶が定かであればここから西にこのエリアの気候を操るからくり館があったはずです。サンドスターを集めながら、そこへと行ってはくれませんか」


アライさん「……」


アライさん「…まかせるのだ、アライさんにはすでに無敵のアライさんパンチというわざがあるのだ」


オイナリサマ「このような脅迫めいたお願いの仕方しかできなくて申し訳ないです…

私も全力でお手伝いします。頼りにしていますよ…アライさん」


建物から出たアライさん、待っていたかのようにセルリアンが襲いかかる。


アライさんは迷いなくこぶしをセルリアンにたたきつける。


「パカァーン」


弾け飛ぶセルリアン、効果があることを確認したアライさんは素早く次々とセルリアンを始末していく。


オイナリサマ「アライさん、よいあんばいです。セルリアンの破片はサンドスターになります、私が回収しますのでそのままからくり館までセルリアンを排除しながら向かってください」


アライさん「わかったのだ!」


なにやら巨大な焼却炉のような、もっともアライさんはそのようなものは知らないが、

そういった雰囲気の建物が見えてきた。


オイナリサマ「あれです、アライさん」


アライさん「ぜぇ、ぜぇ、おぉ!」


オイナリサマ「(がんばって、アライさん)」


アライさん「ついたのだー!」


施設の内部はからくり館の呼び名にふさわしい複雑そうな機械がところ狭しと並んでいる。しかしどれもボロボロで、ところどころ崩れている。


アライさん「うわー、すごいのだ。ちんぷんかんぷんなのだ。オイナリサマ、早速動かしてみるのだ。どうなるのか楽しみなのだ」


オイナリサマ「…」


アライさん「どうしたのだ?」


オイナリサマ「かつて、この星を支配していたけものは、このサンドスターを使ってこのジャパリパークや発電機、発動機、計算機…その他様々なものを作りました」

アライさん「突然何を言い出すのだ?」


オイナリサマ「サンドスターがまだよくわからない未知の物質、私もその全容は全くわかりません…にも関わらずその夢のような効能、特にけものにヒトの特性を与える…そのような禁忌ともいえるような所業がこのような結果を招いたのかもしれません」


アライさん「この期に及んで何を言っているのだ!オイナリサマがやらないのならアライさんがやるのだ!」


オイナリサマ「わかっています、アライさん。覚悟を決めてから来たのです。アライさんの集めてくださったサンドスターを使って修理と起動を行います」


オイナリサマ「はぁあああああ!」


まばゆい虹色にじいろの光が部屋を満たす、部屋が次第にかつての姿を取り戻し始めた。


アライさん「ふわぁぁぁ!すごいのだ!」


やがて、機械に色とりどりの光が灯りうなりをあげて動き出す。


オイナリサマ「これでうまくいくといいのですが…とりあえず少し休みましょう。

よくがんばりましたね、アライさん」


そう言ってオイナリサマはアライさんをじっと見つめた。


オイナリサマ「少し気道が荒れているようです。ジャパリまんと一緒に薬も作っておきましょう、ゆっくりとお休みなさい」




アライさん「ふわぁ、知らないうちに寝てしまったのだ」


オイナリサマ「目覚めましたか、アライさん」


アライさん「おはようなのだ、オイナリサマ。外はどうなってるのだ」


オイナリサマ「アライさん、外へ連れて行ってくださいませんか」


アライさん「そうだったのだ。アライさんが行かなければいけなかったのだ」


そう言って首から下げたお守りと一緒に外へとむかうアライさん。


アライさん「ふおぉ、明るいのだ。空気もきれいなのだ!…けどすっごく暑いのだ!

オイナリサマ「ついていませんね…砂漠エリアだったとは…からくり館は空調が効いていましたからわかりませんでした」


アライさん「とりあえず部屋に戻るのだ」


オイナリサマ「お待ちを、アライさん。どなたか居ます」


アライさん「ふぇ?セルリアンなのだ?どこなのだ、アライさんあまり目がよくないのだ」

オイナリサマ「向かって左側、少し盛り上がった砂地の影側です。近くまで行ってもらえますか?」


アライさん「うぅ。涼みたいけどオイナリサマの頼みなら仕方がないのだ」


オイナリサマ「ごめんなさいね」


アライさん「んん?セルリアンじゃなさそうなのだ。ふわっ!もしかしてフレンズなのだ?」


アライさんはさらに近づく、そのフレンズと思しき存在はそれよりも早くアライさんに気がついて振り向いている。


???「(ぼーっ)あれぇ、ここはどこなのかなー。キミはだれ?」


アライさんはその相手の姿を認めるや否やみるみるうちに顔を青くする。


アライさん「あ…あぁ…うぅ…うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


頭を抱えてへたり込むアライさん。そのまま倒れてしまった。


オイナリサマ「どうしました!アライさん!アライさん!!」

???「き、キミ大丈夫!?」

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