ありがたい
勝利だギューちゃん
第1話
日曜日、俺は買い物に出かけた。
近くに大型スーパーがある。
ここでは、大抵のものは揃っている。
この町の住民は、殆どここで買い物をしている。
その日も出かけてのだが、長蛇の列ができていた。
男性の方が多い。
最後尾の人に声をかけてみた。
「何か、あったんですか?」
「アイドルグループの、○○が来てるんです」
「そうですか・・・」
アイドルには全く興味がない。
そんな俺でも知っているアイドル。
その中でも、一番有名な○○。
彼女が、こんな町の大型スーパーで営業とは・・・
芸能界も大変なんだな・・・
まっ、知ってるだけで興味はない。
先を急ごう。
「こら、そこの人、割り込まないで並んでください」
受付の人に注意されるが・・・
「いえ・・・俺・・・いえ、私は、買い物で・・・」
「いいから、並んでください」
並ばされてしまった。
かなり長いな・・・
でも、どうしよう・・・
何も、持ってきてない。
前の方たちは、何かしらのプレゼントを持っている。
顔なじみの方も多いのか?
何もないな・・・俺・・・
しかし・・・
「いつから、ファンなんですか?」
前の人に声をかけられる。
「私が知ったのは、最近でして・・・」
「そうですか・・・実は彼女はですね・・・」
語りだした。
完全に信者だな。
もっと、時間がかかると思っていたが、限られてるのか・・・
すぐに回ってきた。
どう切り抜けよう。
鞄の中を見る。
ぬいぐるみがあるな・・・
オリジナルの・・・
そういや、知り合いの女の子に渡しそびれていた。
これでいいや。
「いつも、すいません」
「いつも、ありがとうございます」
アイドルが、声をかけている。
顔なじみの方が多いようだ。
でも、ただの握手会みたいだな。
御苦労さまです。
だが、アイドルをおっかけする根性は、俺にはない。
俺の番が来た。
「初めまして」
勝手に声が出る。
「初めまして、ありがとうございます」
そういって、握手をしてくれる。
疲れているのに、とても強く握ってくれる。
ありがたい。
俺は、ぬいぐるみを取りだした。
「この子、いりません・・・よね?」
てっきり、付き返されると思っていたが・・・
「かわいい。ありがとうございます」
「いえ・・・」
「あなたのオリジナルなんですか?」
「ええ、まあ」
「大切にしますね」
喜んでくれた。
逆に、肩すかしをくらった。
後がつかえている。
「応援してます」
それだけ言って、その場を離れた。
知り合いの女の子には、今度渡そう。
もう少し、作ってもらっている。
数日後・・・
そのアイドルの、ブログを覗いてみた。
俺が渡したぬいぐるみを、抱いて笑顔で写っている。
ありがたい。
そして、そのぬいぐるみが、売れ出した。
何がきっかけとなるか、わからない。
ありがたい 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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