チケット

おとなっていうのは、なんだかいそがしそうだ。

いつだって じかんがない じかんがない ってぼくのかおを みずに あたまをなでる。

いいこ にしてるのよ って。

いいこ ってなんだろう?ママのいいつけをまもるこ?

だったら、ぼくはすごく いいこ だとおもう。

ピーマンだっておちゃで のんじゃうし

よるもちゃんと くじにはねる。

ひとにしんせつにして、ほんとうは ままといっしょにねたいのに それもいわないようにしている。

だから ままはぼくのことを だいすきでいてくれる。

まいにち ねるまえにでんわで

「ままはさとるのことだいすきよ、いいこしてねるのよ。おやすみなさい」

っていってくれるもの。

でもね、ぼく、ままのこえをきくと どうしようもなく なきたくなる。

しんぞうのあたりがギューってくるしくなるの。

びょーきだったらいやだから だれにもひみつ。

もし、しんじゃうような びょーきだったら どうしようって べっとのなかで めをつぶるのがこわくて..こわくて...

めをあけて いきだけしてたら からだがとけちゃって あさになると また ぼくにもどってて そしたら いつのまにか ままがおはようっておこしてくれるの。

そしたらぼくは にこにこしちゃうんだ。

ままがいる ことが うれしくて。


でもね きょうは ままにいわなきゃいけないことがあるの。

もう ままにきらわれちゃうかも。

ぼくは わるいこになっちゃったんだ。


「おはよう、さとる。あら、泣きそうな顔してる。怖い夢でも見たの?」

「ううん、あのねまま。あのね..ぼくね...」

「...どうしたの?ゆっくりで良いから教えてくれる?」

「きのう おうちにかえるとき すごく きれいな おはながさいてたの」

「うん、きれいだったのね」

「うん それでね ぼくね それがほしくなっちゃって ひとのおうちだって わかったのに いっぽんだけ もってかえったの」

「....さとるは、取っちゃった時どう思ったの?」

「さいしょは ままに このはなを あげようとおもったの。でもね おうちに かえるころには しわくしゃになって しんじゃったの」

「うんうん、それで?」

「おはなさんは あそこで さいてたかったんだ あのおうちのひとが やさしく してたから あんなにきれいだったの」

「うん」

「ぼくが とっちゃったから しんじゃってね。ぼくが わるいこだから きれいでいれなくなったの」

「そうね、うん。さとるは3つ悪い事をしたの。わかるかしら?」

「おはなをしなせちゃったのと、ひとのおうちのものをとったの。あとひとつは ままにきらわれちゃうの」

「嫌われる?どうして?」

「ぼく...いいっ..こじゃなくなっ...たから、ままっ...ままはっぼくを...だいすきじゃなくなるの」

「さとる、こっちにおいで」

ままは ぼくを ぎゅーっとだきしめて くれた。あたまをなでてくれた。

ぼくはなみだが とまらなく なった。

「違うのよ、さとる。ママはいい子だからさとるが好きなんじゃないの。さとるだから大好きなのよ」

「う..で..でも...ぼ、ぼくいいこ...じゃ..」

「さとるがやった、最後の悪い事は 盗んだものをプレゼントしようとした事。忘れちゃダメよ。それはね、貰った方も悲しいの」

「ごめんなさぁい...ごめ...ごめんなさい」

「ほら、泣かないで。よしよし。大丈夫よ、後でママとお家の人にごめんなさいしに行こうか」

「うん、ぼくごめんなさいするよ」

「そしたら、ママと2人でジュース飲みに行こう。さとるがママを思ってプレゼントしようとしてくれたのは嬉しかったから お返しさせてね」

「で..でもぼく..ままになんにもあげれてないよ」

「ううん、ママはねさとるが元気で生きていてくれるだけで とっても幸せなのよ」

「やっぱりぼくはわるいこだ....まま ぼくね..しんじゃうかもしれないの」

「...それはどうして?」

「よるね、ひとりでべっどにはいると むねが ぎゅーってくるしくなるの。ままのこえきいて でんわをきったら いつもなるの」

「...ごめんね、それはきっと 寂しいっていう気持ち。ままが今度はいっぱいごめんなさいしなきゃいけない事なのよ」

「ままは いいこだよ。ままはごめんなさいしなくていいんだよ」

「違うのよ、さとる。ごめんなさい。今日はママお仕事お休みするから 一緒に寝ようか」

「...いいの?」

「うん、ママがそうしたいの。一緒に寝てくれる?」

「うん!うれしい!」

「うん、じゃあ 朝ごはんを食べて、ごめんなさいしに行こうか。おはよう、さとる今日も大好きよ」

「ぼくも ままがだいすきだよ」

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