短編集

橘 志依

始まり

 目を覚ますと、真っ暗な世界にいた。

何も無い世界に自分だけが存在している。


真っ暗な世界を歩いていると、遠く向こうの方に光があるのを見つけた。


その光の方へ向かっていくと、急に世界が広がった。

色がついて、光が差し込んで、眩しい世界が広がった。


急に怖くなった。


ここは僕の居場所ではない。

真っ暗な世界に帰りたい。

何も無いあの世界だけが僕の居場所なんだ。


そう思って願い続けた。


「僕をあの何もない世界へ帰してください」


誰に願ったのかもわからないけれど、ひたすらに願い続けた。


明るい世界は息苦しくて、怖かった。

早く帰りたい。

僕が呼吸できる場所はここにはないんだ。


だけど、世界は無情にも僕を受け入れた。

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