春 5

少女は軽くうなずいただけだった。


少女は淡い黄色のセーターと紺色のスカート、朝会った時よりいくぶん大人びて見えた。


彼は時折、少女を盗み見た。


少女の方でも、彼のそういう態度に気がついて、時々彼を見たが、彼の視線と合うといつもきまってそらしてしまう。


少女は名前を呼ばれると、立ち上がって診察室へ姿を消した。


彼は少女が今しがた入って行ったドアを、ぼんやりと眺めていた。

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