Thanks God It's Friday

床町宇梨穂

Thanks God It's Friday

彼女は気まぐれだ。

いつも突然気が向いた時に電話をしてくる。

「何やってるの?今から会えない?」

彼女にしてみれば僕は一番気を使わなくて、いつでもつかまる男らしい。

「今ちょっと忙しいんだ・・・。」

僕は家で映画を見てるだけなのにそう答えた。

「あ・・・そう・・・じゃあ・・・またね。」

本当は彼女に会いに行ってもよかった。

映画を見る事はそんなに忙しい事じゃない。

彼女に会いたくない訳でもない。

どちらかと言えば彼女に会いに行きたかった。

でも僕は行かない事にした。

理由は簡単だ。

彼女が電話をしてきたのは十時半を過ぎていた。

こんな時間から出かけるのは面倒くさい・・・と言うわけではない。

もうすぐ寝る時間だから・・・と言うわけでもない。

ただそれが金曜日だったから僕は出かけなかった。

金曜日の夜に電話してすぐつかまる男なんて格好が悪い。

金曜日の夜に一人で映画を見ているのはもっとカッコ悪いけれど・・・。

でも、僕はまた「恋人達の予感」を見始めた。

もうすぐクライマックスだ。

やっぱりメグ・ライアンはかわいい。

エンディングのクレジットを見ていたら彼女に会いたくなった。

思わず電話した。

「やっぱり出かけるよ・・・。」

「忙しいんじゃないの?」

彼女は少し機嫌が悪い。

「プライオリティーの問題だよ。」

「じゃあ、あなたにとって今夜は私が最優先事項って事?」

「そう言う事になるのかな・・・。」

「ふふふ、結構かわいいわよ、すぐ迎えに来て・・・。」

メグ・ライアンとは似ても似つかない彼女だけれど、彼女に会いたい。

気まぐれで、自分勝手で、敖慢で、わがままで・・・・・・。

「恋人達の予感」のせいだ。

メグ・ライアンのせいかも・・・。

金曜日の夜だからかもしれない・・・・・・。


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Thanks God It's Friday 床町宇梨穂 @tokomachiuriho

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