LV 999の戦車兵

@barensiaorengi

第1話 始まりの始まり

俺は朝、電話の着信音で目覚めた。

目は閉じたまま、手探りでスマホを探す。どうやら友達からの電話のようだ。


「もしもしぃ」起こされた怒りを含めながら返事を返す。


「もしもしぃー起きてるかー? “約束”忘れんなよ! 」


お前に起こされたんだよ! と言おうと思ったが心の中に留めておいた。

今日は“約束”の日だと言うことを思い出したからだ。


今から1時間後に師走駅に集合な! と一方的に言われて電話が切られた。

今日は“約束”の日だ! 心の底から嬉しかった。今の俺にはさっき感じた怒りなんてものはすでに頭には存在しない。


俺の朝はブサイクな顔を見ながら洗顔することから始まる。俺の見た目は父親譲りの天然パーマにカッターで顔に切り込みを入れたかのような鋭い目つきをしていて、高校時代のあだ名である「犯罪者」の由縁でもある。

イケメンだったらなぁなんて考えながら食事を済ませて支度をするのが最近の日課だ。


まずは漫画の主人公のようなイケメンではない事をお詫び申し上げたい。


だが、今日は考えてることが日課と違なっていた。洗顔してるときですらイケメンなんて言葉どうでもいいと言わんばかりに俺の頭には戦略と自分の活躍する姿しか浮かんでこなかった。


胸を弾ませながら素早く支度を済ませて早足で玄関を出た。外は炎天下で、肌を焼くような激しい日光が地面を照らしている。

犬や猫を横目に、大変だろうなぁなんて思いながら歩く。


師走駅までは歩いて5分ぐらいで着くぐらいの距離で家から駅までとても近い筈だが、今日は居酒屋やラーメン屋、弁当屋などのいつもの風景が普段通ってる道をとても長く感じさせる。待っているとなかなかやって来ない夏休みのような感覚だ。


師走駅に着くと、駅前にコンビニの外から大きく手を振る友達がいた。俺も大きく手を振り返しつつ、そのまま小走りで友達に近づいていく。


「おう、海斗久しぶり」海斗とは俺の友達の名前である。


「おー久しぶりぃー! 達也ぁ お前はなんも変わんねぇなー」全然会ってないから堅苦しい雰囲気になると思っていたが本人は全く気にしていないようだ。むしろ嬉しそうな顔をしている。今日一番心配だった事がこれで解消された。


俺は海斗と会ってない間のいろんな事を話した。初めは俺のせいで堅苦しい話し方になってしまい会話が弾まなかったが、海斗はどんどん話を振ってくる。しかもずっと笑顔だからこっちも笑顔になる。

しばらく話すうちに言いたいことがポンポン出てくるようになった。高校生活、部活、バイト、友人関係、例をあげればキリがない。きっと早く行こうぜって言われなければずっと立ち話をしていただろう。

やはり海斗との会話はとても楽しく、目的地のゲームショップまであっという間に着いた。


そう、今日の約束はゲームを買いに行くことである。20歳以上でないと遊べないゲームだから、先日20歳になった俺はこれをプレイすることをずっと楽しみにしていた。


店の中に入ると最近のゲームからひと昔前のゲームまでなんでも揃っていて、なんだか店内が懐かしい。


実は俺は昔からゲームが大好きで、新作ゲームの発売となればすぐにこの店に寄ったものだ。

だからこの店主にも顔を覚えられている。2029年現在、AIによる仕事効率化が進んだ代わりに、このように人と会話のできることが強みの個人経営は売り上げが上がって来ている傾向にあり、今でもかなりの数の店が残っているようだ。


「アレを買いに来たんだろ? 」店主が俺に話しかけた。


アレとはsbs(戦車バトルシュミレーション)というゲームである。


このゲームはざっくりいうと4対4の戦車戦をするゲームである。重量制限200tの中、戦車3両とその他一両のチームで構成され、幅15kmのフィールドで戦闘する。

今ではオリンピック競技になるほど人気だ。


魅力はそれだけではない。

このゲームはVRの発展したようなゲームで、好きな戦車をその世界で乗り回すことが出来る新感覚ゲームとなっている。


俺は早速sbs本体と五号戦車パンターD型の戦車のカードを買った。

戦車のカードには名前だけが描かれており、あとで自分のものとして登録できる。

もちろん改造もokだがルールが難しいので、一般の人が改造することは多くない。


このように簡単にルールを復習しながら自分の家に帰る。この瞬間こう思っていた。早くゲームしたい! 今日から俺のsbsライフが始まるんだ! と

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