ドレッドノウト

諸田 狐

序章

漆黒の闇の中、星のきらめきとは別の閃光が現れては消える。

 広大な宇宙ではあまり意味を成さない矮小な有機物と金属の鬩ぎ合いが無数の科学反応、物理反応とともに起きていた。

自由アメリカ連合国宇宙軍スペースフォースの大佐ディーン・ナカムラ・オニールは苦虫を噛み潰しながら、敗北しつつある、自軍の艦隊の戦況を見守っていた。

 カウロンの軌道上にあるハイパートランスポート通信の中継衛星が奴らに破壊された為、地球にある連合本部との連絡が途絶えて既に十二時間が経過していた。

 「艦長、報告です」サカモト少尉がオニール大佐の脇に来る。彼はこの春アカデミーを主席で卒業した秀才だ。

「戦況の報告です。巡洋艦アサマ、ツクバ、ミョウギ、ハルナ、マヤ撃沈です。目下脱出者の回収に当ってますが、まだ十パーセントほどです」

「敵にはどの位ダメージを与えた?」

「敵の戦艦二隻のうち一隻は撃破。残りの一隻に総攻撃をかけていますが、ハエ(ハエとは敵の無人機ドローン)がうるさくて此方のラプター(戦闘機)もかなり撃墜されております」

 オニール大佐がサカモト少尉の報告書に受領のサインをしようとした時、ズズーンという鈍い音と共に強い衝撃と揺れが彼らの乗っている旗艦「ヤマト」を襲った。

 サカモトは衝撃で倒れ、床に倒れた。一方オニールはCICの作戦テーブルに頭を強く打ち付け昏倒した。

 「敵、核ミサイルが右舷に着弾!」「フライトセクションで、火災発生!」「ダメージコントロール要員を消化活動にまわせ!」「艦長! 艦長! 大丈夫ですか? しっかりして下さい!」

 怒号と喧騒が蔓延するCICでオニールは徐々に意識薄れる中、幼き日に父が語っていた宇宙探査の話の記憶が頭の中に浮かんでは消えていた。

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