こんなのいらない

白鷺雨月

第1話残り香

エレベーターに乗ると、ふわりと鼻腔をある香りが刺激する。

オレンジやレモンを連想させる爽やかな酸味のある香り。

それはその場所にその香りのする香水をつけた何者かが、そこにいた証明。

「なんか、いい匂いだな」

ぼそりとアキラは呟くように言った

「ええ、そうかな。酸っぱくてあんまり好きじゃないな」

隣にいる背の低い女性が言った。

猫のようなかわいらしい顔をしたこの女性はアキラの彼女だった。

アキラの自宅マンションのエレベーターでのことである。

「ねえ、そんなことより早く買い物いきましょうよ」

そう言い、アキラの手を引っ張り彼女の百合は急いでエレベーターをでた。


それは第六感とか女の勘とか言われるものだろうか、動物としての本能がこの場所から一刻も早く出るようにと告げていた。

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