深夜二時に私は根深汁を作った
隅田 天美
料理の素人(一般人)が架空の料理を再現してみた実話
私の愛車、アルト(新古車 十万キロ越え)が車検終了し整備工場へ代車を返して元のアルトに乗り換え、スーパーに赴いた。
この時、夜九時になろうとしていた。
『あー、明日のご飯どうしよう? レトルトのカレーがあるからそれでいいかぁ』
などと思っていた。
その時、ふと冷蔵庫に新じゃががあるのと、米がある事に気が付いた。
天啓とも言っていい(スーパーの鮮魚売り場にて)。
私の中の脳内神様が言った。
『天美よ。どうせ、今夜やることは寝ることだけ。後はネットサーフィンだけ。好きな小説や漫画に出てきた料理を作るのです』
瞬間的に脳内で作るもの、買いそろえるべき材料がリストアップされ私は大急ぎで買い物をした。(店の中を走ると大変危険です。実際は早歩き程度です)
まず、一番時間のかかるものとして『根深汁』がある。
『剣客商売』(池波正太郎)の最初の場面で登場するので印象的に残っているひともいるのではないだろうか?
そもそも、根深汁とは、早い話が、「葱の味噌汁」である。
『剣客商売』の番外編として「小説の中に出てきた料理をプロが作ってみた」という企画(?)があり、それが『剣客商売 包丁ごよみ』である。
著者最後の企画だったという。
で、家に帰ってさっそく本を開いた。
が、分量や時間が書いてない。(書いてある料理もある)
いきなりの
なにしろ、親は知らないが私は子供の頃に数回出汁をとった経験があるが、細かいところは覚えていない。
ほぼインスタント出汁に慣れてしまっている。
そこで取った私の行動はスマフォを出して「オッケーグーグル。昆布の煮だし時間」
ズルではない。
これも生活力である。
グーグル先生によると、この時期(七月)の昆布は二時間ほど水につけるらしい。
その間に、新じゃがをゆでる。
これは『魔法使いの嫁』(ヤマザキコレ)に出てきた台詞で疲れた登場人物が「ボウル一杯のマッシュポテトをくれ」と言ったのが印象的だったから。
私もじゃがいも好きだが、ボウルの大きさや量も分からない。
大量だと飽きる。
なので、帰る途中で立ち寄ったセブン○レブンで購入した『サラダフィッシュ』(サラダチキンの魚版)のサーモンを三切ほど入れて塩コショウとマヨネーズ(抵抗としてカロリーハーフ)でマッシュポテトに入れる混ぜた。
次に土鍋で米を炊く。
これは『花と奥たん』に出てきた土鍋ご飯が美味しそうだったから。
そして、一人前用の炊飯用土鍋を私が持っているから(蓋が割れて接着剤でくっつけています)。
意外に早くできた。
米を研いで三十分ほど水に浸して強火で沸騰させて火を止めて再び三十分。
はい、ご飯の完成。
本当に早くて驚いた。
そして、米粒が一つ一つ立っていて水加減もよかった。
さて、再び根深汁である。
この時、夜十一時。
昆布の入った水を鍋に入れ火をつける。
沸騰直前で昆布を取り出し鰹節を入れに出して火を止め放置する。
……鰹節じゃありませんでした。
「安いから」という安直な理由だけで私は「鯖、鰯、鰹の混合ブレンド」を買いした。
……
出汁が出ている間に、切り干し大根(これは単に私の好物)を戻し、味付けホルモンをフライパンで焼く。
ホルモンは閉店前でお安かったので買った。
鰹節(みたいなもの)を金ざるで
この時、今日が明日に変わっていた。(午前零時)
このあたりから玉置浩二の「田園」が脳みその中で再生されはじめて変なテンションになっていく。
出汁(一・五リットル)の三分の一を切り干し大根の煮つけ(砂糖、醤油で味付け)に、そして、ようやっと味噌を解くことが出来る。
冷蔵庫を開け「だし入り味噌」と書かれた某コンビニで買った、私の今までの努力を無にするような味噌を入れて薄切りにした葱を投入。
……
「包丁ごよみ」の写真を見ると、根深汁の葱って明らかに五ミリ以上がありそうなんですけどね……
……
そこから、風呂に入り薬を飲んで床に入ったのが深夜三時。
数時間後。
ホルモンの乗ったご飯が美味しかった。
――あー、奥たん(『花と奥たん』の主人公)はご主人のために毎日土鍋で作っているのかぁ
マッシュポテトがいい塩梅でできていた。(サーモンがいい味を出している)
――私に魔力や魔法がないけれど、
切り干し大根を食べて思う。
――やっぱ、こういうのもいいよな
最後に根深汁を飲んで考えた。
――
まあ、休日に作るのもおすすめです。
ただし、金曜日の深夜ではお薦めできません。
今年、池波先生の墓前に立ったら「再現率低くすいません」と謝ろうと思います。
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