今日はどの異世界にしようかな
@rakugohanakosan
第1話プロローグ其の1
「今日はどのゲームにしようかな」
そう俺はひとりごとを言いながら、今日やることにするゲームを選んでいる。俺はゲームが大好きだ。どのジャンルのゲームだろうと全部やるし、プレイの腕前だってなかなかのものだ。まあ、俺は三十過ぎたおっさんであり、やっているゲームは俺が小学生や中学生のころに発売されたものばかりだ。最近のゲームにはもうついていけなくなってしまった。
ただ、それが金になるかと言うとそうでもない。自分の実況プレイをたくさんの人に見てもらうほど俺はしゃべりがうまくない。かといって、何かの大会で優勝して賞金をもらえるほどの腕を持っていることもない。一人で自分の部屋にこもってただもくもくとゲームをしているだけだ。
そんな俺が部屋にあるたくさんのゲームソフトからどれをプレイするか選んでいると、玄関のドアが開いて女の子の集団が入りこんできた。一、二、三、四、全部で五人いる。全員同じどこかの学校の制服を着ているから、中学生か高校生なのだろうが……
「すいません。あたし格闘ゲームの世界に召喚されることになっているんです。召喚先では“カクゲー”と名乗るつもりですからそう呼んでください。それで、頼みますからあたしといっしょに格闘ゲームをプレイしてください、おじさん」
そう言ってきたのは、いかにも格闘ゲームのヒロインといった感じの女の子である。なにかの格闘技をやっていそうな雰囲気がビンビンに伝わってくる。スカートの下にスパッツをはいていて、どう激しく動いてもパンツは絶対に見えませんよと激しく主張されている気分だ。セミロングの黒髪が、動きやすそうにポニーテールにされているのも武術家っぽい。
「なんですか、いきなり。このおじさまはわたくしといっしょにゲームをするんです。申し遅れました。わたくし、ベルトスクロールアクションゲームの世界に召喚される予定のものです。召喚先では“ヨコスク”と言う名前にする予定ですから、そう呼んでいただいて構いませんわ。そういうわけで、わたくしといっしょにベルトスクロールアクションゲームをプレイしてください」
そう言ってカクゲーをさえぎったのは、金髪のロングヘアーのお嬢さまっぽい女の子だ。ロールという名前からして、ヨーロッパかアメリカあたりのハーフさんなのかな。スカートの下にはストッキングをはいている。これでアクションゲームの世界に召喚されると、どんなことになるんだろう。
「待っていただきたい。こちらのおやじさんはわたしのパートナーになるんだ。自己紹介させていただく。わたしは、シューティングゲームの世界に召喚される予定なんだ。召喚された世界では“シューター”と呼ばれたく思っているから、ぜひそう呼んでほしい。だから、わたしといっしょにシューティングゲームをプレイしてください」
ヨコスクの話に割りこんできたのは、メガネをかけた理系っぽい感じの実験室でビーカーやフラスコでなんやかんやしてそうな女の子である。シューティングゲームと言うとメカメカしい戦闘機のイメージがある。だが、滴さんは戦闘機を操縦すると言うよりは戦闘機を整備してそうな感じだ。とても戦闘機のコックピットでものすごい加速度に耐えられるようには見えない。
「だめだよ。このおじちゃんは僕とゲームをやるんだ。おじさん、僕はね、スポーツゲームの世界に召喚される予定なんだ。むこうに召喚されたら“スポコン”って名前になるはずだから、そう呼んじゃってよ。で、僕といっしょにスポーツゲームをプレイしてください」
滴さんの話に横やりを入れたのは、ボーイッシュな見た目のボクっ子である。ショートヘアーで元気がよく、体を動かすことが大好きってオーラが見るからにただよっている。体育会系っぽく、”おじさん“と言われるよりは“先輩”と呼ばれたい感じのかわいらしい女の子だ。
「あかん。このおっちゃんははうちの相棒になるべきお人や。うち、ガンシューティングゲームの世界に召喚される予定のもんや。あっちの世界では“マグナム”って名乗るつもりやさかい、そう呼んでくれてかまへんで。そやから、うちといっしょにガンシューティングゲームをプレイしてくれへんか」
スポコンの話にわって入ったのは、関西弁を話しながら拳銃を構えたポーズをしている女の子だ。なんだかいまにも『ほんま銃の火薬のにおいが懐かしくなってきたわ』なんてセリフを言い出しそうな、いろいろこじらせている感じがする。正直言って、太ももにホルスターをつけてスカートの中にモデルガンを隠しもっていてもなんの違和感もない。
そんなふうに五人の女の子がいっせいに、自分はどこぞの異世界に召喚されるから俺に付き合ってほしいと言ってきた。いきなりそう言われても……
俺がそう戸惑っていると、五人の女の子が俺を説得しにかかってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます