AI(5月)

翌日。学校にて。



「よー、王様。何読んでるんだ?」

自分の席で本を読んでいるところに、ケインがやってきた。

「えっとこれ…、小説。ケインは?」

「俺はな…実は、これ」

「なにそれ…って、え!? それ、もしかして…」

ケインがポケットから取り出したのは、なんとスマートフォンだった。

「しーっ、声でけえよ。そんでさ、ここをこうするとな…」

ケインが慣れた手つきでタップしていくと、何かの起動画面になった。


「なにこれ?」

「AIって知ってるか?」

「知ってるよ。人工知能でしょ?」

「灰理がさ、これの開発に成功したんだよ! ボイスもついてるんだぜ! え~っとここをこうして…」

ケインがまたスマホをいじり、何かをタップしようとした、瞬間。

「お~っす! ケイン、王様、おっはよ~!」

みっちゃんが教室に入ってきた。相変わらずひょうひょうとした態度だ。

ケインはあわててスマホを隠し、挨拶した。

「お、おはよー、みっちゃん」

「おはよう!」

私も軽く挨拶をして、ケインの手元に目をやった。スマホには大きく、実態モード起動と書かれたボタンがてかてかと光っていた。


「そういえば、まだレオっち来ないの?」

私は質問した。

「ああ、レオっちはね~…」

みっちゃんが話そうとしたその時…

「はよーす…」

よろよろと教室に入ってくる影。見覚えのあるそれは…

「もしかして、レオっち!?」

珍しく髪を縛らない、男の子の格好だ!

「もしかしなくても、俺だよ…」

「お前、正気か!? 男の格好するなんて…」

「信じられないほど、正気じゃない。っつてもさー、かーちゃんがうるさくてさ…戻せ戻せって」

「レオっち…」

私は何とも言えない気持ちになった。おそらく私よりも高い女子力を持っていたレオっち。それが、一日で普通の男の子に戻ってしまった。

「しんみりすんな! 笑顔が一番! 笑え笑え~!」

なんて声をかけようか悩んでいたら、みっちゃんがいきなりレオっちをくすぐりだした!

「あはははは! やめろ! 満長! ひいいっ!」

「よかった…。レオっち変わらないね」

「本当だよ…。心配したんだからな~! 混ぜろ~!」

そういうと、ケインもくすぐり始めた!

「ちょっ…、お前ら本当やめろっ…! ひいっ!」

レオっちがさらに悲鳴をあげる。

「たすけて…たすけろ、王様っ!」

「おお、勇者よ、死んでしまうとは何事だ! 情けない!」

「まだ死んでねえし!」


なんて、ぎゃーぎゃー騒いでたら、後ろの方からいきなり机をバンッとたたく音がして、

「ちょっと男子たち、いい加減にしてよ! うるさいんだけど!」

と、怒られてしまった。

「ひー、こっわ! 皆、あっちいこ!」

みっちゃんに促されるまま、廊下に向かった。

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