第3話 三毛猫のウワサ

「乃倫子、幼稚園遅れちゃうから早く支度して」


「いま、やってる」




私は靴下を履き、母のいる玄関へ急ぐ。




「今日ゴミの日だからゴミ捨てしてから行くよ」




そう言って母は両手にゴミを持ち、お尻で玄関のドアを開ける。




あれ? 幼稚園遅刻しそうなんじゃ......。






「おはようございます」




近所の公園のゴミ捨て場に着くとそこでは、近所のおばちゃん達によるゴミの日恒例の井戸端会議が繰り広げでいた。




「おばちゃん達、おはよう......」




母にゴミ袋の一つを渡された私は、フラフラしなからもなんとか母に着いて来た。




「あ、ノリちゃん、おはよう。えらいねー、お母さんの手伝い?」




井戸端会議に参加していたおばちゃんの一人が私に話しかける。




「そうなの、これを手伝うとお小遣いがたくさんもらえるの!」




そう言ってチラッと母の方を見る。




こんなに重たいのを持たされて、タダ働きなんてゴメンだ。ご近所付き合いに漬け込んでお小遣いをもらってやる。




「...........」




母は目を反らし、


「あー、スルーした!!」




それを見て、おばちゃん達は「あははは」と笑っている。




そして、ひとしきり笑うと、おばちゃんの一人が母に向かって話始める。




「最近、このゴミ捨て場でゴミが荒らされてることが多くなってるんたよ」




「もしかしてカラスですか?」




電柱なんかの上を見てみるがそれらしい鳥はいない。




「それが違うんだよ、猫だよ? 三毛猫!」




猫!!




「猫ですか......。三毛猫ということは誰かの飼い猫が逃げて来たんでしょうかね?」




「それで、こいつが頭のいい個体らしくてネットを張っても上手いことズラして漁るからこうやって朝から皆で話ながら見張っているのさ」




あれ? いつもここで好きなだけ話してなかったけ?




「なるほど、小森さんはその三毛猫を見たんですか?」




「いや、中谷さんが朝早くにチラッと見ただけで他は誰も見てなんだよ。その猫、人のいない時を狙ってくるから。どこかから見張ってるんじゃないかな」




私は小森のおばちゃんに聞いてみた。




「その猫はどうなるの?」




「散らかされてみんな困ってるからねーー。専門の人に頼むしかないかなーー」




小森のおばちゃん、もしかして、「保健所」や「殺処分」といった言葉を避けて話している。




私はあるアイデアを閃いた。




「みんな困ってるなら、私が助けるよ、その猫を捕まえてあげる!」




そうすれば捕まえて猫をたべられるもんね!

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