風船
勝利だギューちゃん
第1話
帰り道
自宅近くにある児童公園の木に、赤い風船が引っかかっていた。
普段なら通り過ぎるのだが、なぜか気になった。
僕は、近寄ってみた、
正直なところ、運動は得意ではない。
当然、木のぼりも苦手だ。
しかし、この位置なら手を伸ばせば取れる。
僕は風船を取った。
「手紙?」
風船の下に、手紙がくくり付けらていた。
小学生の頃、学校で風船に手紙をつけて、飛ばしたことがあったが、
その類か・・・
一応、持って帰ってみる事にした。
「ただいま」
「お兄ちゃん、お帰り?何それ?」
「ああ、風船だ。公園の木に引っ掛かっていた」
「何かついてるね」
「ああ、手紙だな、ほれ」
僕は、手紙ごと風船を渡した。
僕の妹の、麻衣は体を崩して自宅療養をしている。
そのために、学校へは行っていない。
両親は離れて暮らしている。
今は社会人である僕が、麻衣の親代わりでもある。
「あの手紙は、何だったのかな・・・」
ふと気になった。
夜
「お兄ちゃん、いい」
「どうした?」
「この手紙、明日出しておいてくれる?」
「誰に出すんだ?」
「風船の人、住所が書いてあったから」
「そっか、明日出しておくよ」
「ありがとう」
そういうと、僕は手紙を鞄にしまった。
翌朝
「じゃあ、行ってくる。大人しくしてろよ」
「うん、行ってらっしゃい。手紙忘れないでね」
「ああ、すぐに帰るからな」
そう言って出かけた。
手紙は忘れないうちに、ポストに投函した。
数日後
家のポストを見ると、珍しく手紙が入ってた。
麻衣宛だ。
差出人は・・・
知らない人だ。
でも、ダイレクトメールや、勧誘ではないようだ。
「ただいま」
「お帰りお兄ちゃん」
「そうだ。手紙が届いてたぞ」
「ほんと!」
手紙を差し出す。
「うわーっ、返事がきた」
「知っている人か?」
「うん。風船の人」
「そっか・・・」
妹の笑顔を見て、こっちまで嬉しくなった。
詳しい事を訊こうと思ったが、止めておいた。
麻衣から、話してくれるのを待とう。
それからも、文通は続いているようだ。
麻衣に友達が出来たようで、兄としても嬉しく思う。
数ヵ月後
「すいません」
知らない女の子に声を掛けられた。
「どうかしたの?」
「ここらへんに、○○アパートの、○○さんは、知りませんか?」
「それなら、うちだけど、どうしたの?」
女の子は照れくさそうに、手紙を差し出した。
これは、麻衣の手紙だ・・・
じゃあこの子が・・・
もじもじ、している。
「わかった、案内するよ」
「誘拐しません?」
「しません」
まあ、警戒心が強いのはいいことだろう。
「ただいま」
「お帰りお兄ちゃん、あっ、その子は?」
「お前に、お客さんだ」
「私に?」
連れてきた女の子は笑顔で挨拶をした。
「初めまして、麻衣さん。私が・・・」
風船 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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