58(ごっぱー)「デスノート…?」

@earoero

第1話 解脱

息苦しい。

臭い、暑い。


俺は今、無数の肥えた中年の男性たちに囲まれている。

これは日常的な出来事だ。

七日間の内、五日間はこの状況に身を置いている。


揺れに合わせて体のあちこちに圧がかかる。

肋骨が折れるのではないか、と思う瞬間もある。


毎日何故こんな思いをしなければならないのだろう。


ドアが開いた。

大量の人間がホームへと流れ出す。

自分もその波に乗って改札口へと運ばれていく。

波というよりベルトコンベアの方が近いかもしれない。

会社に出荷されている感覚だ。


繰り返される日々。

このループから抜け出せるような何かをずっと待っていた。


だから今、俺は感激している。


空から降る一冊の黒いノートを目の当たりにして。


「デスノート…?」


俺はその落下点へと走った。


古びたビルとビルの隙間、狭い路地裏にそれはあった。


拾い上げたノートの表紙には『DEATH NOTE』と書いてある。


「やはりこれは、デスノート…!」


俺が大好きな漫画に出てくる殺人ノート。

それが実在するなんて、にわかに信じがたい。


表紙をめくってみると白いインクで英文が書かれている。


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