冬の墓標

枯れてゆく冬に名前はなく

キャベツ畑の片隅で枯れてゆく草花を

墓標にしても誰もみるものはいない


ただ今日一日を生き抜くことが

大切なんだと、うつむきがちに言う人に

ぼくは沈黙でこたえる、ただ春が来ると

ただ冬が終わったのだと、言うことはない


食卓に並ぶ皿に

ロールキャベツ

春だねと

呟いてもひとり

ただ今日一日を

生き抜くことだけが

大切なんだと

うつむきがちに

今日一日と噛みしめる


枯れてゆく冬に名前はなく

墓標は春に萌えでる草花にのまれて

畑ではキャベツの頭を仰け反らせ

そっ首に鎌を吸い込ませていく

そうして春もまた少しずつ

刈り取られていくのだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る