いつものこと
わたしは悲しみを拾います
だれの悲しみだろう
なぜ悲しいのだろう
取り留めなくおもいます
掌で包んでみたり
耳をあててみたり
抱いて寝てみたり
机の上に置いてみたり
床に転がしてみたり
水の中や空に浮かべてみたり
地中に埋めてみたり
時には舐めてみます
ひとつひとつ味も形も重さも違います
暗闇に投げ入れると輝くもの
潮騒に触れると震えだすもの
雑踏の中で人の足に絡むもの
時折、わたしはそいつらを料理しようかと
綺麗に腹わたを抜いて
出汁をとりスープにしたり
すり下ろして薬味にしたり
天日に干して干物にしたり
サラダスパの彩りにしたり
カクテルの隠し味にしたり
レシピを考えてみますが
他人の悲しみを血肉にすると
自分がわからなくなるので
食べることだけはしません
ひと通りしてから
わたしは落とし主を見つけて
そっ、と気づかれないように
返しておきます
それから黙ってそばに座ったり
笑いかけたり
離れていったりします
後はお気に召すまま
気の向くままに
時計がぼーん、と時をつげます
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