1   僕だけの再会


     僕だけの再会




 乾いた風と強い日差しがたわむれる昼下がり。

 ホテルビーチコマーのプールサイド。

 いろどられた絵画のような景色の中でアーモンドの瞳は僕達だけだった。


「ねえっ」

 上目遣いを添えてユリカはプールの中から手招きをしていた。

「・・・・・」

 僕は苦笑いと共に首を横に振った。



(昨日の夜あんなに汗をいたのに・・・)



「・・・・・」

 ビーチパラソルが作る日陰の中で僕はデッキチェアに体を伸ばし、時折りユリカを穏やかに眺めていた。



(この爽やかさは日本じゃ難しいな・・・)



「・・・・・」

 うとうととしていた僕の鼻先を素敵な香りが通り過ぎた。

 香りの先には、白いキャミソールのすそ膝上ひざうえで風に揺らしている女性が居た。

 上品なサンダルにしなやかな足首。

 オレンジアッシュのナチュラルカールが美しい。



(顔が見たいな・・・)



 彼女は二つ隣のデッキチェアでキャミソールを脱ごうとしていた。



(黒のビキニ、似合ってんなぁ・・・)


「・・・・・」

 サングラスで隠れていた瞳はブルーではなかった。

「・・・マジか!」

 僕は思わず声を出してしまった。

(マジか・・・)

 昨日、ワイキキ動物園で釘付くぎづけになった女性だった。



「ねっ、健二っ、入っておいでよ!」

 ずっと見当たらなかったユリカがプールのエッジに両肘りょうひじを付いてこちらを見ていた。

「・・・了解・・・」

 ユリカは淡水を満喫まんきつしながら、サングラスで隠れた僕の目が彼女に夢中になっている事を察知したんだろう。



 僕の体はプールの中で彼女とたわむれ、気持ちはデッキチェアに横たわる彼女と戯れていた。



「おいおい・・・」

「えへっ」

「止めろって」

「・・・・・」

 ユリカは後ろに居る僕のスイミングスパッツの中に手を入れて笑っていた。






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