冴えないおっさんのギャルゲー転生記〜謎に設定されたMPについての考察〜

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プロローグ

 ––––––そうだ、首を吊ろう。


 思い立ったが吉日。山があるから登る的な勢いでロープを購入し、賃貸(家賃1.9万)の平屋のボロアパートに設置する。


 少し眺めてみると、うん。なんか最初からあったかのようにさえ見えてくるから不思議だ。


 これから首を吊る俺こと山田やまだ 俊文としふみは現在35歳無職。童貞。この世に嘆きと混沌を生み出す負の魔法使いである。


 さて、と。設置したロープに少し体重をかけてみるとギギギッと嫌な音が部屋に響き・・・というか部屋ごと悲鳴を上げている気がする。

 身長が160cmに対し体重が100kgのピザである俺にかかれば部屋ごと粉砕ということか?


 まあ、いくらクソボロといっても倒壊まではしないだろうと高を括って、パイプ椅子に立つ。


 しかし、いざ死ぬとアレだな。色んなことを思い出す。


 高校を卒業してからすぐに就職出来たはいいものの職場でイジメに合い退職。いくつかアルバイトを経験した上で再就職し、またもイジメられ退職。それが嫌になり、思い切って起業するも1000万円の借金を残し、3ヶ月で倒産。


 全てに嫌気が差し、迫りくる督促の電話や訪問を軽くいなしてはガス、水道を止められ、家賃は半年滞納。電気はギャルゲーをするためだけに払い続け、ついに、最後のギャルゲーでハーレムルートをクリアし、思い残すことはなくなったというわけだ。


 さて、と。様々回想してみるも、大体この辺りでいつも首吊りは止めてしまうのだが、今回は覚悟が違うのだ。覚悟がね。


 そして、意を決しロープに頭を通し、パイプ椅子を蹴った瞬間だった。



 ––––––ラァアアラァアアラァアアアアアア



 視界の先にキラキラと光を纏った美少女が現れる。なんだこの変なBGMは。


「貴方は選ばれました」


 そう声が聞こえた。だが目の前の美少女は口をピクリとも動かさず目は閉じたままだ。


 余談だが金髪貧乳である。そしてロリだ。ロリロリだ。是非攻略したい。攻略してprprしたいがリアルでやったらお巡りさんへGO!なのでやめておく。というかリアルなのかこれ?


「ええ、これは現実です」


 どうやら現実らしい。というか考えてることバレるとかマジ神じゃん。ていうか神?


「はい、わたしは神エロース」


 マジか。頭の中で金髪貧乳ロリとか言っちゃったよ。神罰は勘弁してください、エロちゃん。


「エロちゃんは止めなさい」


 あ、声が一段低くなった。これ怒ってる。金髪ロリ貧乳神・・・ロリ神は怒っている。


 ところで、ロリ神は何の用?


「ロリ神・・・まあいいでしょう。貴方を異世界に転生して差し上げようと思いまして。好きでしょう?そういうの」


 口の端がピクピクしている。エロちゃんのが可愛いと思うんだけど、本人の意思だ。尊重しよう。


 でも、マジか・・・。でもいざ異世界へと言われると悩みどころだ。こちとら伊達にニートしてない。転生したところで即死しかねん。


「安心してください。確かに貴方の想像するようなファンタジーもありますが、貴方の転生する先は、とにかく美少女が多い、貴方がいうところのギャルゲーに近い世界です」


 ま、マジでか!?あの無条件でやたらモテる主人公的なポジションで転生出来るんですかロリ神様ァアアアアッ!!ありがとぉおおおおうっ!!


「はい、そうです。ですが、その世界はあくまで現実です。ゲームではない、と言っておきましょう」


 ・・・それってほぼ現実じゃない?


「そして、1年以内にカップルが成立しなければ魂ごと消滅します」


 リスク高っ!!!


 魂ごと消滅って・・・まあ今まさに死のうとしてたわけだけども。


 ところでキャラクターエディットは出来ますか?いや、はっきり言おう。イケメンになれますか?可能なら可愛い系の歌って踊れる感じのやつ。そんでいくら食べても太らない不思議体質になれますか?


「いえ、ピザデブのままです。名前は田中 太郎に決定しました」


 っておぃいいいいいいい!?何決定してんのぉおおおおお!?

 ピザデブ舐めんなよ!!そこに居るだけで嫌われんだよ!!コンプレックスの塊なんだよ!!


「さあ、ピザデブ行きなさい。新たな世界が貴方を待っています」


 ちょ、お前!!俺の名前、田中太郎なんじゃ––––––。


 話す度に適当になっていくロリ神に言いたいことは沢山あった。なのに、だんだん意識が遠くなっていく。


「貴方の二度目の人生が良きものとならんことを––––––」


 その声を最後に俺の意識は完全になくなった。






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