第7話
「陽菜ちゃんも対策?」
わかってんよな? 着いてくるよな。という空気に耐え切れず男が彼女の後ろをとぼとぼ歩いていくと近くに既にタクシーが用意されていた。
「ですの。まあ、ウチもきーちゃん家もお金だけはありますので足代の遠慮はしなくて良いですの」
「なんで脅されて着いてこさせられてタクシー乗せられて遠慮しなくちゃいけないんだよ」
「なかなか言いますのね。」
「文句の一つでもいわんとやってられん」
タクシーの運転手は何も言わずに道を走る。車はどんどん俗に言うタワマンエリアに進む。
「それにしても、どうしてこの一週間全く連絡つかなかったのは何していましたの?」
「霞食って生きていた」
「仙人ですの?」
「いっそそうなれたら精神も揺るがないのに」
「は、儚いですの」
男はニコチンを体内に入れたい感覚を必死に打ち消しため息を吐く
「割と真面目に気づいたら一週間たっていたんだよ。何をしていたかと聞かれたら何もしていないというのが本当のところ」
「新しい世界を見せてしましましたのね」
「しばき倒すぞ」
「目が笑ってませんの」
「笑えねえからな」
そうこう言っているうちに目的地に着いたのか車は静かに停車し、自動扉が開く。
そのまま陽菜は支払いをせずに表に出る。くそ結局支払いはオレか、ともう突っ込むことも面倒くさくなった男が財布をとりだすと
「何してますの」
「何してるって支払い」
「気にしなくていいと言いましたの。しばらくそこら辺を走っておいてくださいの」
「承知いたしました」
車の運転手はそういって静かに車はまた走り始めた。
「何をハトが豆鉄砲食らったような顔していますの」
「東京ってタダでタクシー乗れるんだ」
「そんな訳ありえませんの」
陽菜は呆れた顔でそういった。
「でも今のは?」
「あれは私の家の運転手ですの。・・・・何ですの次は豆鉄砲ではなく実弾でも食らいましたの? 」
「いっそ無料の方が心穏やかだったわ」
男は呆れた物言いでそういった。その様子に陽菜は不満だったのか軽く唇を尖らせた。
「そんなこと言わないでほしいですの。私が世間ずれしていることくらい言われなくても分かっておりますのよ」
「えげつないマンションだなコラ」
男の眼前にはタワーレヂデンスと名付けられそうなこう
「さっきから言ってますの。私ときーちゃんの家、お金だけはありますの。その上父親はきーちゃん大好き人間ですので高校生で独り暮らしが確定した時点できーちゃんにはセキュリティシステム万全のマンションしか与えませんの」
「コンシェルジュがいるマンションとか初めて見た」
「さて、行きますの」
堂々と陽菜はマンションはいる。男が挙動不審ぎみに後に続く
「こんにちは」
「こんにちはですの」
男と陽菜が入るとコンシェルジュは対応に回る。完璧な笑顔だ
「3702の木島真衣に繋いで欲しいですの。陽菜が来たと言えば通じますので」
「畏まりました。」
そして手元にある内線で連絡をとる。男はあまりになれない世界にマンションないをキョロキョロと見てしまう。
「そんなに、舐め回すように見ませんの。今のあなたは不審者と間違えられても文句は言えませんの。」
「いや俺、不審者な気がしてきた」
「あまりに自信が無さすぎますの」
陽菜がため息をつくと同時にコンシェルジュは顔を上げる。
「お待たせしました。奥へどうぞ」
どうやら真衣とはコンタクトがとれたようだ。
ありがとうと言って奥へ歩く陽菜について行こうと足先を同じ方向に揃えたとき。
「失礼ですがそちらの男性は」
ほらそんなキョロキョロしているから言わんこっちゃないという顔で陽菜は男を見る
「その男はなんでもありませんの。」
「いえ、しかし、」
「通して貰えませんの?」
「こちらの借り主様に男性は通さないように申し付けられております」
その通り、女性は至極真っ当な反論をする。すると陽菜は威圧的に大きくため息をついた
「こんなこと言いたくはありませんが、あなたには私が誰か分かっているはずですの。しょうもないことで私の時間を無駄にしないで貰えますの?」
「っっつ」
不意に男の回りの空気が不穏なものになる。え?なにこれ怖い。
「いえ、しか」
「しつこい」
ピシャリとそう良い放ち、コンシェルジュを無視して歩みを進めようとした陽菜の足は思った通りに動かなかった。
「待て待て待て」
腕はがっしりと男に捕まれていた。
「何のつもりですの?」
「何のつもりもねえよこのスットコドッコイ」
「す、スットコドッコイ」
「ほら一旦引くぞ、では失礼」
そのまま、男はずるずると陽菜を引っ張って歩いてその場を立ち去った。
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