第36話 鬼ヶ島頂上決戦

「なによ!? なによ!? お母様ったら!? いい~だ!」

 帰路を歩いているカロヤカさんは、妖狐の親子が黒花たちに酷い目に合っているとは知らなかった。

「それにしても、チホは大嶽丸さんだからいいけど、フウコは大丈夫かな? 相手が相手だからな。」

 カロヤカさんは、鬼ヶ島に向かったフウコの心配をするのだった。

「お花畑の小鬼ちゃん親子も気になるな。」

 カロヤカさんは、子鬼たちの心配をする。


「ようこそ! 鬼ヶ島へ!」

 鬼ヶ島とは、鬼の巣窟のことである。

「私、風属性だから、空を飛んで海を渡ってたどり着けたから良かったけど、本当に海の上の島って、来る者を拒む自然の要塞よね。」

 フウコは、鬼ヶ島に来たことを鬼たちに歓迎される。

「いらっしゃいませ! 鬼ヶ島へ!」

「ど、どうも!? 酒吞童子さんいますか?」

「はい、こちらです。」

 フウコは、鬼の中を進んで行き、酒吞童子の所へ案内される。

「なんだ? おまえは。」

「私は、カロヤカさんの友達の風花フウコです。」

「あの小娘の友達か。」

「はい。最近、黒い殺し屋という物騒な事件が起こっていまして、今回は、鬼と妖怪と鬼神の皆さんにも助けて頂こうと思って、お願いにやってきました。」

 フウコは、酒呑童子に最近は世の中が物騒だから助けてほしいと伝える。

「その必要はない。」

「ええー!? 助けてくれないんですか!?」

「違う。おまえ、後をつけられただろう。」

「え?」

「敵さんの登場だ。」

 酒呑童子は、招かざる敵が鬼ヶ島までやってきたと感じ確信している。


「イバラちゃん、ここが、あなたのお父さんとお母さんを殺した、鬼の総本山、鬼ヶ島よ。」

「鬼ヶ島・・・私のお父さんとお母さんを殺した・・・鬼がいる。」

 黒花は、黒い妖精に連れられて鬼ヶ島までやってきた。

「鬼神を皆殺しにしたみたいに、鬼も皆殺しにしましょうよ。」

「私の家族を殺した者たちを許さない!」

 黒花は、全身から悍ましい黒いオーラを醸し出す。

「クックック、どんどん絶望と悲しみが集まってくるわ。イバラちゃんは、暗黒を生み出す人間装置ね。」

 鬼ヶ島の上空には暗闇に覆われていく。

「やめなさい! あなたたちは何者?」

「人の家に土足で入ってんじゃねえよ。」

 風花と酒呑童子が現れた。

「あれが鬼の総大将かしら? イバラちゃんなら簡単に殺せそうね。オッホッホー!」

「ヘル、私は鬼をやる。あなたは女の子の方を任せるわ。」

「了解。」

 ヘルは、楽しいショーになりそうだと、ニヤリと笑う。

「おい、おまえが、あのいかれた女の相手をしろ。」

 酒呑童子は、風花に黒花と戦えという。

「ええー!? なんで私があんなヤバイ女の相手をしないといけないんですか!? あなたの方が強いんだから、あなたがあの黒い女の子の相手をすればいいでしょう!?」

 風花は、逆に酒呑童子に黒花と戦えと詰め寄る。

「バカ野郎。隣に、もっとヤバイのがいるじゃねえか。俺は、そっちと戦う。」

 酒呑童子は、黒花の横にいる黒い妖精と戦うつもりだ。

「ズルいー!? 自分だけ、あんな小さくてカワイイ妖精と戦おうだなんて、最低よー!? それでも男なの!?」

「知るか。俺は、鬼なんでね。それに小さいのより女の方が弱いぞ。」

「はい! 女の子と戦います!」

 酒呑童子は、黒い妖精をロックオンする。

「いでよ! 風の妖精シルフの鎧・忍び装束! 装着!」

 風花は、風の精霊の鎧を装着する。

「風花にお任せあれ!」

 風花は、刀を構えて戦闘態勢に入る。

「ハウンド、私に力を貸してちょうだい! いでよ! 黒犬の鎧・忍び装束! 装着!」

 黒花は、亡き黒い犬のハウンドの鎧を装備していく。

「黒花にお任せあれ!」

 黒花も鎧を装備し、戦いの準備を整える。

「いでよ! 私の刀。絶望の刀と、悲しみの刀。」

 黒花は、黒い刀を二本出し、二刀流の構えに入る。

「死ねー! 鬼! お父さんとお母さんの仇!」

 黒花は、酒呑童子を目掛けて突撃していく。

「なに!?」

「やらせないわよ!」

 黒花の侵攻を風花が刀で斬りかかり遮る。

「私の邪魔をするな!」

「仕方がないじゃない。鬼さんが、あなたの方が小さいのより弱いって言うんだもの。」

 風花は、酒呑童子の言葉を信じているのであった。

「ということは、私の相手は、あなた。」

「そういうことだ。」

「いいの? あんな小娘で、うちのイバラちゃんの相手が務まるかしら?」

「さあな。人間が死のうが生きようが俺には関係ない。」

 黒い妖精と酒呑童子が相対することになった。

「おまえ、ただの妖精じゃないな?」

「ご名答。その通りよ。私は、ただの妖精じゃないわ。でも、あなたは私の正体を知る前に、死んでしまうのよ! オッホッホー!」

 黒い妖精は、酒呑童子を簡単に殺せると思っている。

「え?」

「ああ、そうだな。おまえの正体を知る前に、俺が殺してしまうから。」

 一瞬で油断している黒い妖精の間合いに入り現れる。

「鬼の一撃!」

「ギュワア!?」

 酒呑童子のパンチを顔面に直撃して吹き飛ばされる。

「悪いな。これでも手加減したつもりだったんだが。」

 酒呑童子は、軽く肩を回してウォーミングアップしている。

「ヘル!?」

 黒花は、黒い妖精が吹き飛ばされ地面にめり込むのを見て信じられなかった。

「つ、強い!? 鬼の頭目と言われるだけあって、酒呑童子さんは強い!?」

 フウコは、あんな人にタメ口を聞いていて、自分の命も危なかったんじゃないかと気づいた。


「私の家族を助けなくったちゃ!」

 亡きお父さんとお母さんに約束した。今度こそ自分の家族を守るんだと。

「あなたの相手は私です!」

 風花は、ヘルが吹き飛ばされて動揺している黒花を攻撃する。

「吹け! 疾風! 唸れ! 風声! 疾風怒濤! 私の花! 必殺! 風のアネモネ! 花風斬り!」

 つむじ風の斬撃が黒花を襲う。

「ふん。」

 しかし黒花は、全く避けようとはしない。

「なにー!? 風の斬撃がきかないだと!?」

 風花の攻撃は、黒花に命中はしたが通じなかった。

「まだ蚊に刺された方が痛いわ。」

 黒花は、刀を構え攻撃に入る。

「味わえ! 絶望! 飲み込まれろ! 悲しみ! 暗黒時代! 私の花! 必殺! 黒のブラック・ローズ! 黒い秘剣! 終わらない絶望と終わらない悲しみの花黒斬り!」

 黒花は、必殺の斬撃を花風に向けて放つ。

「キャアアアアアア!!!」

 風花を絶望と悲しみが襲う。

「忍法! 黒遁の術! 黒イバラ!」

 立て続けに攻撃を繰り出す黒花。

「なに!? これは!? ギャア!?」

 黒いバラの花が風花に触手のように巻き付いていく。

「ミンチ!」 

 黒いバラが風花を締め付け、一瞬で体をバラバラに引き裂いてしまった。


「出て来いよ。化け物。無事なんだろう?」

 酒呑童子は地面に埋まっている

「化け物に・・・化け物と・・・言われたくはないものだな。」

 地面の中から黒い妖精が起き上がってくる。

「あれで生きてるんだ。化け物だろう。」

「そんなことは、どうでもいい。今のパンチは、かなり痛かったぞ。痛かったんだぞー!!!」

 攻撃を受けた怒りで黒い妖精が激怒している。

「なんだ!? こいつは!? さっきまでと性格が変わってやがる!?」

 荒い言葉遣いになった黒い妖精に酒呑童子は驚く。

「ヘル! 助けに来たわよ!」

「さすがイバラちゃん。もう女の子を倒したのね。」 

 そこに風花を倒した黒花がやってきた。

「まったく役に立たないな。人間は。」

 酒呑童子は、風花が黒花に負けたことは気にしない。

「おい。鬼。」

「なんだ?」

「さっきの攻撃はなかなか痛かったぞ。お礼におまえに良いものを見せてやろう。」

「何をする気だ!?」

「ハアアアアアアアー!!!」

 黒い妖精は、いきなり黒花の体に侵入していく。

「ヘル!? いったい何を!?」

 ヘルが何をしようとしているのか分からない黒花。

「イバラちゃん。私たちは家族よ。家族は一つにならないとね。あなたの体は私のものだー!!!」

「キャア!?」

 完全にヘルは、黒花の体の中に入り込んだ。

「なんてこった!? 本当の化け物だ!?」

 酒呑童子は、恐ろしい光景を見てしまった。

「いでよ! 死の国を支配する女王ヘルの鎧・忍び装束! 装着!」

 ヘルに支配された黒花の肉体が死の国を支配する女王の鎧を身にまとっていく。

「死花にお任せあれ!」

 完全に黒花の体をヘルが支配した。

「これが人間の体か? 実に素晴らしい。死の国を支配する女王の私にふさわしい体だ。オッホッホー!」

 ヘルは、黒花の体を見回して、死の国の女王である自分が生きている人間の体を手に入れたことを喜ぶ。

「喜ぶのは、まだ早いぞ。おまえは、これから俺に殺されるんだからな。」

 酒呑童子は、ヘルの支配した黒花を殺すつもりである。

「お待たせしました。鬼さん。私とあなたが戦うことはないんですよ。」

「なに?」

「なぜなら、あなたは鬼ヶ島ごと消滅するのですからー!!!」

 黒花ヘルの上空に、黒花イバラが集めていた黒い雲、黒い暗黒が鬼ヶ島を飲み込むぐらい大きく育っている。

「なんだ!? あの大きな黒い雲は!?」

 酒呑童子は、黒い暗黒の大きさに驚愕する。

「全て消え去ってしまえー!!!」

 ドカーンー!!!!!!! 大きな黒い暗黒が鬼ヶ島に衝突する。鬼ヶ島が爆発の煙に覆われてしまう。原爆のキノコ雲のような雲の姿が見える。

 つづく。

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