第16話 武力無しでも、争いを治める
「本当に戦わないで、勝っちゃった。」
カロヤカさんは、鬼神、人食い山と戦わないで、汚れた邪な人間の魂を純粋にきれいな花々を咲かせることで、勝利することができた。
「お金・・・。」
「女・・・。」
「妖狐・・・。」
鬼神になっていた邪な人間、邪人の魂が天に成仏していく。
「安らかに眠ってちょうだい。」
カロヤカさんと妖精は、手を合わせて邪な魂の成仏を願うのであった。
「はあ~、きれいな花の山ね。」
妖精は、暴れていた鬼神の山が、美しい花の山になったことに、まだ驚いている。
「どうしたの? カロヤカさん。」
「これもあいつのおかげなのよね。あいつが教えてくれなかったら、私は戦うことしか思いつかなかった。」
カロヤカさんは、酒呑童子のことを思い出している。
「鬼ってなんだろう?」
「鬼なんじゃない。」
「そうね。鬼は、鬼よね。」
カロヤカさんは、鬼は悪い者と思っていたが、何かしっくりしなかった。
「妖狐の山の位置が変わっちゃったね。」
「いいんじゃない。おばさんが自分で元の位置に移動させるでしょう。」
「それより花見の客が密猟者より多くやってきてうるさいわよ。」
「帰ろっか。」
「うん。」
カロヤカさんと妖精は、人魚の茶店を目指すのであった。
「おお! 茶店が治ってる!」
カロヤカさんたちが人魚の茶店に帰って来ると、壊れた茶店が新しく立て直されていた。
「やるじゃん、ホビホビが作ったの?」
「小人は手先が器用なのだ。エッヘン。」
小人は、鍛冶屋や刀工だけでなく、日曜大工もお手の物だった。
「カロヤカさん、大嶽丸から手紙を預かっているわよ。」
人魚から手紙をカロヤカさんは受け取って読む。
「なになに、カロヤカさんへ。最近、私の体の調子が悪く。」
「それは、マーメイド・ティーを飲むからです。」
「各地で鬼神が暴走して暴れています。カロヤカさんには、私に変わって、各地の鬼神を倒してもらいたい。ご迷惑と思いますが、カロヤカさんなら、軽やかに助けてくれると信じています。」
「拒否する!」
手紙を読み終えたカロヤカさんは、大嶽丸の依頼を断った。
「そこは「カロヤカにお任せあれ。」って、言うところじゃないの?」
「拒否する時は、拒否します。ノーと言える大和撫子。」
カロヤカさんは、日本各地を旅するのが面倒臭かった。
「な、なんで私がやらないといけないのよ!? 私は茶店でアルバイトをしないといけないんだから!」
カロヤカさんは、日本の平和のために鬼神退治よりも、日々の生活費のために茶店でのアルバイトを優先させる。
「あなたはクビよ! アルバイトは、クビ!」
人魚は、カロヤカさんにアルバイトのクビを宣告する。
「ええ!? なんで!?」
「あなたが働きだしてから、不吉なことばかり起こるのよ。」
「たまたまよ!? 私の性じゃないわよ!?」
物語が成立するためには、不吉な事件や凶悪なクエストが起こらなければいけない。だって、それを解決するのが物語だから。
「私がいなくなったどうするの!? 人手不足になって困るでしょう!?」
「大丈夫! あなたが鬼神と戦っている間に、新しいアルバイトを雇ったから!」
「あ、新しいバイト!?」
そこに一人の可憐なウエイトレス衣装の少女が現れる。
「紹介するわ。新しいアルバイトの水花みなもさんよ。」
「初めまして、みなもです。よろしくお願い致します。」
水花は、深々と頭を下げて挨拶をする。
「か、カワイイ!?」
カロヤカさんは、新しいアルバイトの少女を見て、強敵が現れたと感じた。
「でも、でも、でも、私は戦えるけど、こんなカワイイ女の子が、鬼神や妖怪とは戦えないでしょう!?」
カロヤカさんは、自分の強みをアピールする。
「こちら、みなもちゃんのペットです。」
「初めまして、水の精霊ウンディーネです。よろしくお願い致します。」
水花は、ペットに水の精霊を飼っていた。
「あら? 妖精のフェアリーさん、お久しぶり。」
「元気だった? 私は元気よ。ウンディーネ、あなたも寝言で、この世界に呼ばれたの?」
妖精と水の精霊は、異世界では仲良しの友達だった。
「これは私の水の刀です。」
「ほうほう。」
水花は、自分の剣を出す。
「ウンディーネ、よろしく。」
「はい、みなもちゃん。いでよ! 私の鎧!」
水の精霊は、水の鎧を呼び出す。
「水の鎧よ! 私に潤いを!」
水花は、水の鎧を装着する。
「水の精霊の侍!?」
水花は、水の精霊の侍になった。
「ガオオオオオオー!」
そこに鬼神、人食い水が現れる。
「ここは私にお任せください!」
水花は、自ら先陣を買って出る。
「水が潤い、水が弾ける! 明鏡止水! 生き物のように激しく流れ溢れろ! 私の水! 必殺! お花水斬り!」
水花の必殺の一撃が鬼神、人食い水を切り裂き倒す
「す、すごい!? たったの一撃で鬼神を倒しちゃった!?」
カロヤカさんも、水花の強さに目を疑った。
「ここのことは私に任せて、カロヤカさんは、全国の鬼神や妖怪を退治しに行ってください。」
「う、うう!?」
純粋な水花の言葉に、文句が言えないカロヤカさん。
「分かりました。カロヤカにお任せあれ。」
退路を断たれたカロヤカさんの苦し紛れより、名言が生まれた。
「いってらっしゃい。」
「お土産を待っているぞ。」
妖精と小人は、笑顔で手を振っている。
「あんたたちも行くのよ!」
「え? なんで?」
「僕たちは、茶店で下剤を仕込まなければいけないから無理。」
「あれを見よ。」
「え?」
「いらっしゃいませ。人魚の茶店、自慢のマーメイド・ティーはいかがですか? はい、ありがとうございます。人魚さん、マーメイド・ティー2つお願いします!」
「はい! 喜んで!」
「私、運びますよ。」
人魚の茶店は、人魚と水花と水の精霊の3人で十分回っていた。
「私たちの居場所は、ここにはないのよ。」
「く、悔しい~!? 私たちは鬼神を倒しに行っていただけなのに!?」
「下剤がマーメイド・ティーに入っているって、言いふらしてやる!」
カロヤカさんたちは、水花たちに完全に負けた。
「分かったわよ! 日本全国どこにでも行って、鬼神でも妖怪でも倒してやろうじゃない!」
カロヤカさんは、全国に武者修行の旅に出る決意を決める。
「カロヤカにお任せあれ。」
つづく。
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