8. はぐれメスガキ純情派。肝試し、そして現れた本当に恐ろしいもの

 アニキ! アニキ!




 しっかりして!!




 あ、あ……。




 だいじょうぶ、だいじょうぶだから、うごかないで!

 わかる!?

 火はもう消えたよ。

 もうだいじょうぶ



 うごかないで。

 あかりが無いからわからないけど……多分、無理しちゃダメ。




 ほかの奴らはわからない。

 この部屋に入って、何かツンとくるにおいがして、カイチューデントーを向けたらたおれたポリタンクからドバドバ……アニキが逃げろって。


 それからちりぢりになって、あの爆発……。


 それっきり。


 アタシはミズキといたけど、あの長い長いさけび声を聞いて。

 カイチューデントーはその時わたしちゃった。

 かべをさわって、必死に来た道をもどって、かいだんを……そしたら火だるまでバタバタしてる人かげが見えた……ひょろ長くてだれなのかすぐわかった。




 クソッ、ただのゴミやしきだと思ってたのに。




 アニキ、スマホ、どこ?

 いや。




 うっ。

 服と肌の区別がつかない……。


 


 ああ、ごめん!!

 痛かった!?

 悪い、悪い、もうさわらないから。




 うん?


 


 しゃべろうとしてる?

 ぜんぜんわかんない、言葉になってないよ。




 でも、いい、しゃべらなくて、しずかに……。

 止めなってそんな口パクパクしても……?


 あ……ノド、かわいてる……?




 リュックにアクエリアスが……。




 あ。

 ごめん、やっぱダメ、ひどいヤケドの時に水を飲むと死んじゃうって。

 はだしのゲンで読んだ……。




 ゲンバクの後、あのどろどろになった人たち……。




 でもさっきは! そんなかんじじゃなかった。

 見えないけど、きっと平気!

 病院に行けばなおるから!



 ああ、もう。

 ミズキ! ヒナ! ミユ!

 だれか!!







 ちくしょう……。







 こんなところ、来るんじゃなかった。

 キモダメシなんてバカみたい。




 ……?




 だいじょうぶ?

 生きてる?



 息がよわくなってるの、わかるよ。

 ねたらだめだから、たぶん。








 あのさ。

 むりやり車出させて、つれてきて、ごめん。

 せめて……ウチらだけで来とけば。

 本当はさ、ちょっとビビッてた。

 ここは本当に“出る”ってヒナが言ってきて。

 何も出なかったけど、あのポリタンクは何だったんだろう……。





 ごめん、いつもいつも。

 いつもわがままばかり言って……。




 お願いだから……死なないで。




 手、にぎっていい?





 いたい?

 だいじょうぶ?




 あたたかい……。





 !



 足音、聞こえる?

 一つじゃない、みんないる!

 ヒナがスマホ持ってるから、もうだいじょうぶ。




 みんな! みんな! 早く! アニキが、救急車を!

 早く!







 まぶしっ。




 え?





 ミズキ、ヒナ、ミユ。










 ……アニキ。









 あなたは、だれ?


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