岡山の少女 9

その時だった。


彼女の運転する車が、視界に入って来て、僕の前で静かに停止した。


二人の視線が絡み合い、彼女はにっこり笑った。


僕は並んでフロント・シートに腰を下ろした。


優しい横顔を見せながら、彼女は詫びるように言った。


「ごめんなさいね。時計が10分ほど遅れていたの」


僕は、彼女のそんな弁解に楽しく耳を傾けながら、じっと見つめた。


薄茶のセーターにオレンジのスカート、胸には木の実のペンダント、くちびるはほんの少し赤く、すべすべした頬は薔薇色に染まり、僕の目を奪った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る