自分探し

暗藤 来河

プロローグ

 俺、内海直人うつみなおとには子どもの頃から聞かされてきた話がある。内海家に代々伝わる伝承だ。

 曰く、内海の男子には偽物が現れる。偽物を見つけ出さなければ、いずれ取り込まれて消えてしまう。

 親父はドッペルゲンガーと言っていた。自分も十代の頃にドッペルゲンガーを見つけたから今も自分でいられるのだ、と当時小学生の俺に語った。


 俺はこれまで全く信じていなかった。要は自分探しの旅をして成長したとか、中二病から抜け出したとか、そういうことを変に例えて話しているのだと思っていた。

 俺はその話を信じないまま十七歳、高校二年生になった。未だに自分のドッペルゲンガーには会っていない。どうせこれからも会うことはない。そう思っていた。

 二学期の期末試験前、家で黙々と勉強した次の日に、友人にこんなことを言われるまでは。

「お前、テスト前だってのに昨日ゲーセンいただろ。余裕だな」


 その翌日、僕はインフルエンザに罹ったと学校に伝えてドッペルゲンガーを探し始めた。

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