ゲーム


「うぐぐ……」

「へへーん! 楽勝です、この程度!」


 部屋に戻ると、ブラウン管テレビの前に並ぶ二人の姿があった。

 おそらく6号室から持ってきたのであろう、ゲーム機のケーブルが繋がれていた。


 なにかの格闘対戦ゲームのようで、飾莉がくやしそうにほっぺを膨らませながらゲームに熱中していた。

 一方、久園寺さんはコントローラーを華麗に操作し、飾莉の動かすキャラクターを縦横無尽に攻撃していた。


「この大乱戦スムッシュブラザーズは私のゲームコレクションの中でも得意中の得意! 大会でタイトルをとったこともあるんですっ!」

「ぐぬぬ……」


 何やら盛り上がっているようだ。

 仲良く遊んでいるところを横から水を差すのも申し訳ないので、俺は早速夕飯の準備に取り掛かることにした。


 水を張った鍋をコンロにかけ、冷蔵庫からうどんの玉を3つ取り出す。

 ある程度茹で上げたところで、しょうゆ、酒、みりんを加える。卵を落とし半熟になったところで丼に移す。

 仕上げにネギ、かまぼこ、油揚げを添えて、きつねうどんの完成。


 ちゃぶ台に丼を三つ並べたところで、夕飯が出来たことを知らせる。

 二人はゲームをやめると、「いただきまーす」と言ってうどんをすすり始めた。


「うーん、おいひい! 悟さんの料理はいつも美味しいですねっ」

「それはどうも」


 こうして美味しいと言って食べてくれるのなら、作った側としては本望というものだ。


「そういえば今日、副会長に会ったよ」

「へ?」


 久園寺さんは麺をすすると、箸を止めた。


「彼女……元気にしてましたか?」

「うん。久園寺さんのこと心配してたように思えたけど」


 すると、久園寺さんは申し訳なさそうな顔をして指をもじもじさせた。


「小島さんには迷惑かけてばかりです……。家にきたときも、合わせる顔がなくて、居留守をつかってしまいました」

「副会長って、どんな人なの?」

「しいていえば、何でもこなす超人です」

「そうなんだ……」


 きっと、生徒会長の仕事も代わってこなしているのだろう。

 わきに抱えていた書類の束をみれば、その忙しさがうかがえるというものだ


「でも、学校に通っていたときはすごく良くしてくれていたんですよ。色々と相談にのってもらったり……」

「早く学校にいけるようになるといいね」

「はい……」


 そうして、夕食をたいらげた。

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