第10話 老夫婦
「ふっふっふっ、ハル~ついにできたぜぇ~」
カズキ他2名がニコニコしながら店に入ってくる
「おっ、いらっしゃい」
勝手知ったる俺の店・・・カウンターのいつもの席に座る3人
そして取り出したのは純然と輝くオリハルコン製ミートハンマー
ミスリルじゃなかったのか・・・しかも総オリハルコンとか無駄金使いすぎじゃね?
「これなら文句はないだろ!ってなわけで、ベヒモスカツ定食とお持ち帰りでカツサンド2人前」
「「俺も俺も」」
ちょうどいい暇潰しだ!喜んでやらせてもらおう!
少し厚めに切ったベヒモスの肩ロース
自家製パン粉、ラード作成に始まる一連の作業
黙々と作る
ミートハンマーの攻撃力ヤベェ!Dランク冒険者くらいなら1撃で撲殺できそうだ・・・
あぁ、処理が速い・・・それほど力を籠める必要もない・・・
オリハルコンスゲェ!
・・・調子に乗って30枚もトンカツ揚げました・・・
ハイテンションの俺はキャベツを刻む速度も上がる!
いつもだったらパックの味噌汁でお茶を濁すところだが、
今日は出汁からとっている・・・
いやー、料理楽しいわ・・・毎日じゃなきゃね・・・
ご飯、みそ汁、お新香、キャベツマシマシのトンカツ定食
パンにマスタードを塗り自家製のトンカツソースで仕上げる
「さぁ!完成だ、ソースはこれを、オリエンタルマスタードもお好みで」
「待ってましたぁ!」
「それとカツサンドを先に渡しとくよ、インベントリに入れとくんだろ?カツの熱が冷める前だから今がチャンスだよ」
速攻でインベントリに入れるカズキ
「いや、ソースが浸み込んでいい感じになったカツサンドも捨てがたくは無いか?」
「あぁ、わかります、冷めた感じがちょうどよかったりしますよね」
「俺の分はカバンの方に入れとくから一人前ずつトレードしようぜ」
「ナイスアイディア!」
剣聖と賢者はトレードするようだ・・・
「今日の予定は?」
「俺達は近くのダンジョンでレベリングだよ」
「晩飯は食いに来るから」
速攻で食い終わり、そう言って出て行った・・・
勇者御一行が出て行った後しばらくしてから品のいい一組のお客様のご来店がありました。
テーブル席に座る二人
「このパスタという料理をセットで、私は冷たいコーヒーで頼むよ、お前はどうする?」
「わたくしもパスタを頂こうかしら、飲み物は冷たい紅茶でお願いしますわ」
「かしこまりました」
雰囲気的に老夫婦って感じだな
仲良さそうで羨ましい・・・こんな感じに年を取りたいものだ。
今日のパスタはミートソース
・・・いや、これ袋ごと温めるだけで出せるから簡単で・・・
現世だと100均でも売ってるもんなぁ・・・
2人前のパスタを茹でる
ご注文の飲み物をインベントリから出しグラスに注ぐ
アイスティー、アイスコーヒーは作り置きしてあるから注ぐだけ。
サラダを取り出し器に盛りつける
ドレッシングはゴマと和風、和風はオリジナルドレッシングって名目で出す
「お待たせいたしました、パスタセットをお二つ、アイスティー、アイスコーヒーです。ドレッシングはゴマとオリジナルお好みでおかけください」
「あぁ、ありがとう、ん~いい香りだ、食欲が増すね」
「うふっ、貴方はお皿まで食べないようにしなきゃ」
「ふん、頂くとしよう」
「ごゆっくりどうぞ」
二人は嬉しそうに食べている
「これでやっと肩の荷が下りたな・・・」
「そうね、長いようで短かったわね」
「二人で頑張って幸せになってくれればそれでええよ」
「あんなに小さかったあの子が結婚だものね」
「そうじゃな、跳ねっ返りじゃがいい家庭を作れればいいなぁ」
しみじみとしゃべりながら食を進める・・・
ふむ、娘さんの結婚式の帰りってとこか・・・それは羨ましい・・・
「まさか騎士様を旦那に捕まえてくるとは思わなんだ・・・」
「ほんと、びっくりしたわ」
「ワシら平民が貴族の嫁とか冗談かと思ったぞ」
騎士爵・・・下級貴族か・・・
騎士団所属全員が騎士爵ではない、一部だけが騎士なのだ
見習いも含め一般団員は所属の兵士という扱いらしい
庶民的には、鎧を着て馬に乗ってれば騎士だと思ってしまうが・・・
騎士、ナイトは称号であって職業では無いのだ。
騎士が率いてる戦士団・・・が騎士団なのである。
一般人の中では裕福層かな・・・
「まぁ、結婚すれば、あの跳ねっ返りも落ち着くだろうて・・・」
「そうだといいんですけど・・・」
相当なじゃじゃ馬娘のようだな・・・
食事が終わり、会計を済ませて帰っていく・・・
「ごちそうさん、美味かったよ」
「ほんと、美味しかったわ、また寄らせてくださいね」
「はい、ありがとうございました、またのご来店をお待ちしております。」
感じのいい老夫婦だった・・・
・
・
・
それから数日後・・・その老夫婦と若い男女
おそらく結婚したっていう娘さんと騎士の旦那さんってとこだろう・・・
「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」
「うむ、こないだのパスタが美味かったからな」
「私に同じものを作れって、無茶言うんだから・・・」
「あれは家でも食いたいだろ?」
「お父さん、とりあえず席に座りましょうよ」
「ハーヴェスタ様もお席の方に」
「お義母さん、呼び捨てで結構ですよ」
なりたての家族って感じでぎこちなさが見えるな・・・
4人とも席に座りメニューを見てる
「お義父さんが勧めるお店がまさかハルヒトさんの店とは思いませんでした」
「知り合いか?」
「勇者様と同時にこの世界に来られて、私はその日、門兵をやってました、困った顔のハルヒトさんにギルドと教会に行ったらどうかって・・・」
あの時の衛兵さんか・・・
「覚えてますよ、あの時は助かりました、しかし何故私の名前を?」
「勇者様がハルヒト様の家に同居する!って酒店を出したから飲みに行けって宣伝してました」
「なるほど・・・」
「その辺りの酒場と比べて値段が高いからなかなか敷居が高くて・・・」
「叙爵されたのは最近ですか?」
「そうなんです、勇者様がオーク討伐で留守の際に近くの村に出たジャイアントリザードの単独討伐の功績が認められました!」
ジャイアントリザード・・・Cランクの冒険者がパーティーで戦う相手だな。
単独討伐って・・・結構強くね?
「話を聞いて先行したのですが運悪く私だけ見つかってしまいそのまま戦闘に・・・」
あいつら地味に動きが速いから・・・
「良く勝てましたね、かなりの強敵ですよ」
「必死でしたよ、それでも当たり所が良かったのか動きが鈍ってどうにかこうにか倒せました」
「ほんっと心配したわよ!ハーヴェは腕を噛まれて大怪我してたんだから」
ちょっと怒ってる娘さん
「ごめんってば、ケイトには心配かけたね、看病してくれてありがとう」
・・・その辺りが馴れ初めか・・・
「腕を噛んで止まった所、首筋に剣を突き立てて・・・」
頸動脈を切り裂いたってとこか、まさにクリティカルヒット!
「その話は30回くらい聞いたわ・・・とりあえず食べましょうよ」
「ワシはこないだのパスタのセットを」
「わたしも同じで」
「どうしよっかなぁ・・・私もパスタのセットを冷たい紅茶で、食後にケーキが欲しいかな」
「では、私もパスタのセットを大盛で、冷たいコーヒーで頂こう」
「なぬ!?大盛なんてのがあるのか!ワシもそれで」
「かしこまりました、パスタセット4つうち2つが大盛ですね 冷たいコーヒーが2つと冷たい紅茶が2つ、食後にケーキ1つですね」
「うむ」
「それでは少々お待ちくださいませ」
俺は厨房に引っ込み作り始める・・・
麺以外は取り出して盛り付けるだけの簡単作業・・・パスタの茹で時間+αで全員分仕上がる
「お待たせいたしました」
全員に配膳する
「ごゆっくりどうぞ」
「あまねく神々に感謝をしこの食事を頂きます」
おぉ!さすが貴族!言い回しもカッコイイ!
家族で談笑しながらの食事・・・どこか羨ましい・・・
元々家族のいなかった俺はどこか冷めてたんだよなぁ・・・
そんなことを考えつつ仕事仕事っと
減り具合をたまに確認しながらグラスを磨く・・・
「すまんが飲み物のおかわりをもらえるか?」
「かしこまりました」
コーヒー紅茶のピッチャーを持ち席に行きグラスに注ぐ
大体食べ終わってるのを確認したらケーキとシャーベット4人前を持って席へ
「こちらがご注文のケーキ、こちらはサービスのオレンジシャーベットです。新婚と叙爵おめでとうございます。」
「あっ、ありがとうございます。」
「はははっ、お幸せそうで羨ましい」
「まだまだこれからですよ」
「マスターは彼女もいないの?」
突き刺さる言葉・・・自分が新婚だからって・・・殺意を覚えるわ・・・
「残念ながら・・・お店に出ずっぱりで、出会いも時間も無いですよ」
「今度、友達連れてお茶しにくるよ~」
「はははっ、期待しないで待ってますね」
そうだ!俺って結構優良物件じゃないのか?
勇者様と知り合いだし、店を構えて一人二人養う財力もある
顔は・・・微妙か?
でもBランクの冒険者だぞ・・・
なんて自己分析をしてみるも、やはりくたびれた感があるのかなぁ・・・不毛な思考を完結する。
そんな感じで食事も終わり会計を済ませる
「また家族で来ますね」
「ご来店、心よりお待ちしております。」
そういえば誰だったかが言ってたな・・・
彼女が欲しい欲しいって思ってる時って何故かうまく見つからず、
何かの拍子でさらっと見つかるもんだって・・・
これも物欲センサーに引っかかってるんだろうか・・・
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